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2007/04/22

「はるか、ノスタルジィ」私的映画考Vol.75

今日、ご紹介するのは大林宣彦監督作品「はるか、ノスタルジィ」です。原作:山中恒(「おれがあいつであいつがおれで」「なんだかへんな子」)。出演:石田ひかり、勝野洋、松田洋治、尾美としのり、川谷拓三、増田恵子他。

小樽の春。少女小説「小樽・恋シリーズ」の作者・綾瀬慎介(勝野洋)は小樽にいた。挿絵作家でもあり、親友でもあった紀宮の葬儀のため、30年ぶりに故郷・小樽を訪れたのだ。そこで、自分のファンだという少女・はるか(石田ひかり)と出会う。

はるかの案内で小樽を散策する間、古風な身なりの少年(松田洋治)を見かける。慎介はいつしか、その姿が過ぎし日の自分の姿だと気付く。慎介は自分で封印してしまっていた過去を次第に思い出していくのだが・・・。

小樽の雪は海から舞い上がってくるという。そして、厳しい冬が終わると、小さな春がやってくる。海の見える丘。その厳しさがあるからこそ、そこからの景色はいつまでも変わらないのでしょう。坂の多い町、小樽。細く曲がりくねった路地はまたしても尾道に似ています。

物語が進む内に、慎介は悲しい少年時代に対面します。行く先々で、少しずつ思い出していく慎介。そして、思い出の中にいた少女・瑤子(石田ひかり・二役)。それは、ただ一度の恋。激しくも儚く終わってしまった恋だったのです。はるかに瑤子の面影を重ねる慎介。そして、少年時代の自分が慎介の目の前に現れます。

石田ひかり演じるはるかの一瞬見せる大人の表情は、厳しくも美しい。あどけない少女であるはずのはるかの中に大人の女性を見る慎介。現在の自分と過去の自分とはるかとで、奇妙な三角関係は悲しみを深めつつ展開していきます。

尾道三部作(「時をかける少女」「転校生」「さびしんぼう」)、新・尾道三部作「ふたり」を経て、辿り着いた集大成とも言うべき本作。大林監督の映画に対する情熱、原作者・山中氏の古里・小樽に対する思い入れが激しくぶつかり合い、久石譲が美しい音楽で色を添え、そして、見事に融合し大林映画のある種の到達点に至った作品とも言えるのでしょう。そこには、気迫や執念さえも感じます。

過去はやり直せない、だからこそ今を懸命に生きなければいけない。過去は思い出の中でこそ美しい。そして、その美しさは、今を生きる人々にとっても限りなく美しい。失われた時を求めて、はるかな記憶の中へ自分探しの旅にでる・・・。

そして、いつしか少女は大人になる。

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