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2007/07/15

藤崎慎吾「螢女(ほたるめ)」

「螢女」藤崎慎吾・著 ソノラマ文庫

今日、ご紹介するのは藤崎慎吾の「螢女(ほたるめ)」です。前回、同じ著者の短編集「レフト・アローン」を読みまして、いたく感動してしまったので、今度は長編を読んでみました。

主人公・池澤亮は「ITマガジン」のライター。ひとり故郷の近くの森に入り、使われなくなったキャンプ場にいた。人気のない山中には廃屋となったキャンプ場の管理棟が残っていた。そして、森に響き渡る電話のベルの音。おそるおそるとった受話器から流れ出る声は、山を破壊して進められるリゾート開発工事の中止を池澤に訴えた。

調べる内に電話の声の主が一ヶ月前にその山で消息を絶った女性と知り、蛍女の伝説と幼い頃慕った少女の面影を彼女に重ね合わせた池澤は、友人の植物学者・南方と調査を開始するが・・・。

電気も通っていないし、もちろん電話線も繋がっていない施設にある電話機。なぜ、電話機からありえない声が語りかけるのか?浮かび上がってきたのは、人間の排除に動く「山の神」の恐るべき意志と、その手段だった。

現代の日本を舞台にしたSF小説です。首都圏郊外の森の中にリゾート開発と称して、自然の破壊とも言うべき開発が始まります。その開発を取り仕切るのは、もうひとりの主人公とも言うべき吉峰。潔癖性とも言える清潔好きで、病的な神経質。完全主義者なのでしょう。彼にも螢女となった女性・蛍子との因縁があります。

物語は池澤と吉峰の動向を通して展開します。池澤には幼い頃の後悔があります。幼なじみと言うよりも、幼いながらにも恋心を抱いていた澄子。澄子は不幸が重なり、家を追われ、行方しれずになっていたのです。もしかしたら、助けてあげられたかもしれない。それは、30年以上前の話、幼かった自分に何ができたのだろう。忘れていた過去の出来事。次第にその過去が明らかになっていきます。

螢女が登場するシーンは極めて幻想的で美しいです。静まりかえった森の中、無数の蛍が集まり、光の渦を描き、次第に密度を増し、青い陽炎のように立ち上り、女性の姿を形作りだします。そして、青い光の粒子でできた女性は、森を救ってくれと池澤に懇願するのです。この本を買ったのは昨年なのですが、読んだのはちょうど蛍の季節の今だったので、余計に臨場感がありました。むせかえるような森の中。蛍の群れ。木々のざわめき。光。そして闇。

幻想的なシーンがいくつもありますが、正反対に科学的にリアルな描写があるので、真実味が出てきます。植物や動物、森全体がひとつのネットワークを形成し、情報を共有・伝達していると言う下りは、興味深いです。現在のインターネットと同様の仕組みが森にはあるんだと。荒唐無稽のような気もしますが「人間はいつでも二番煎じ」なのかもしれません。

SFという設定ではありますが、描かれているのは人間のエゴや、自然に対する畏敬の念、自然を大切にするべきだという想いなのでしょう。21世紀の現在でも、科学では解明できない事はまだまだあるに違いありません。そして、守るべきモノは必ずあります。そんな想いに浸れる作品です。SF小説ではありますが、小難しい設定はあまりありませんので、誰でも気軽に読める作品になっていますので、SF小説が苦手な方もぜひどうぞ。

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