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2008/02/11

「22才の別れ Lycoris葉見ず花見ず物語」私的映画考Vol.121

今日、ご紹介するのは「22才の別れ Lycoris葉見ず花見ず物語」です。大林宣彦監督作品。原案:伊勢正三。出演:筧利夫、寺尾由布樹、細山田隆人、鈴木聖奈、中村美玲、窪塚俊介、清水美砂、中村美鈴他。 「なごり雪」に続く大林宣彦・大分三部作の第二弾。

あなたに
さようならって言えるのは
今日だけ

福岡の貿易会社に勤める川野(筧利夫)は1960年代生まれの44歳、独身。仕事は順調で、上海支社への転属の話もあり、エリートコースを歩んでいる。社内に恋人未満の有美(清水美砂)がいるが関係を築く勇気はない。ある日、川野は仕事帰りに立ち寄ったコンビニのレジで「22才の別れ」を口ずさむ少女、花鈴(鈴木聖奈)に出会う。その後、コンビニを辞めた花鈴に再会した川野は「援交して」と言われ戸惑う。

そして、花鈴の話を聞く内に衝撃を受ける。それはかつて22才の誕生日に別れた恋人・葉子(中村美鈴)にまつわることだった。伊勢正三の「22才の別れ」をモチーフに描く、母娘二代に渡るあまりにもせつない日本の恋の物語。

全編を流れる名曲「22才の別れ」がせつないです。そして、悲しい色の彼岸花Lycoris。別名が多く、曼珠沙華、死人花、地獄花、幽霊花等がありますが、花の咲くときには葉はなく、花が終わった後に葉が茂ると言うことから「葉見ず花見ず」とも呼ばれるようです。彼岸の頃に真っ赤に咲く花、どことなく儚く悲しそうな雰囲気を漂わすこの花がモチーフになっています。

人生の岐路に立った主人公。川野は子供が作れない。恋人未満の有美は子供が欲しいと言う。そんな事実も切り出せない川野。そして、花鈴は、母親を出産の時に亡くしている。だから、子供を産みたくないという。そんは母親を「あの人」という花鈴。そこがまたせつない。

誰しも、人生を過去に戻ってやり直したいことはあるはず。しかし、そんなことはできないのが現実。川野はようやく過去を振り返ることができる年齢になった時に、運命的な偶然が連なる出会いによって、「果たせなかった想い」「あの時、言えなかった一言」をやり直すチャンスに巡り会えたのです。

私と同年代の主人公の若かりし頃、あんな事があった、あんなモノ持ってたなあと言う懐かしい想いと共に、ほのかに心をざわつかす想い。誰もが忘れられない過去の恋。川野のそれは、父親のような大きな愛となって向けられていたのです。

かけがえのないモノを、夢を、懸命に、後悔なく追うことが大切。それでも、人は過去の後悔の中で生きるが、希望は必ずある。福岡県と大分県の大分、津久見、臼杵といった街々を背景に描く、30年あまりの激動の時代の中で、日本人が失ってきた人の心の思いへの哀切な叙事詩。ラストの美しい臼杵の竹宵がまたせつないです。せつないけれど、生きる情熱に出逢う映画であり、中年男が抱くファンタジーなのかもしれません。

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