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2008/04/05

原宏一「床下仙人」

今日ご紹介するのは、原宏一・著「新奇想小説・床下仙人(祥伝社文庫)」です。

念願のマイホームに入居して早々、「家の中に変な男がいる」と妻が訴えてきた。仕事、仕事でほとんど家にいない主人公の”おれ”。ノイローゼでは?とおもっていたそんなある夜、”おれ”は、洗面所で歯を磨いている男を見た。髭を仙人のように伸ばした男だ。その男の正体はいったい・・・(「床下仙人」)。

表題作「床下仙人」にはじまり、システムのガードの甘さから始まる復讐劇「てんぷら社員」、男性社会へと挑む女性専用マンションの住人たち「戦争管理組合」、派遣社員がいるのなら派遣社長がいてもいいじゃないか「派遣社長」、家族から追い出された初老の男性と家族を捨てた女子高生の奇妙な境遇を描く「シューシャイン・ギャング」の5編からなる短編集。

いずれの作品も、ほんの些細なきっかけから、ちょっとした発想の転換から、物語は始まります。主人公はどこにでもいそうなサラリーマン。しかし、ワーカホリック気味で、ちょっと仕事が過ぎる感じ。私はそれほど仕事に没頭するタイプではないですが、それでも、主人公に感情移入出来てしまうのは、立場的には同じサラリーマンであるからでしょう。

夫が悪い、妻が悪い、会社が悪い、社会が悪い、ぜーんぶひっくるめて社会構造が悪いと言いはなってしまうのはカンタンですが、本当はそうではなく、誰も悪くないんでしょう。あえて、誰が悪いかと言えば、結局は自分の中に原因があるはずで、分かってはいるけれど、認めたくないのが現実。それが悲哀となって身に染みるのでしょう。

「シューシャイン・ギャング」では、リストラにあい、家族から追い出された初老の男性と、家族を捨てた女子高生が、渋谷の雑踏の中、新しい商売を試みる様子を描きます。家庭・家族からはみ出したふたりが、こんな世知辛い世の中でも、交流を重ね、信頼し、愛と言う絆で結ばれていく、心温まるラストシーンが良かったです。

不況不況と叫ばれている昨今、景気は上向きなんて言われてはいますが、実感がありません。物価は上がる、税金、社会保険は上がる、でも給与は上がらない。そんな厳しい世の中ですが、前向きに努力を怠らなければ、希望はきっとあるはず。

「床下に仙人がいる?」と言うイメージのタイトルが気になって、手に取った本書。ちょっと不可思議なタイトルからくる表面上の面白さもさることながら、その裏に潜む現代社会の歪みともいえる、不条理さをリアルに描き、さらに、どこにでもありそうな家庭が舞台になっているので、会社人間の悲哀がリアルさを増しています。

現代日本を風刺とユーモアで笑い飛ばし、その背景に潜む恐怖とは言えないけれど、なんとも言えない不安を描く新奇想小説集。ご一読あれ。

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