« 「ランボー 最後の戦場」私的映画考Vol.144 | トップページ | 「シューテム・アップ」鑑賞 »

2008/06/06

機本伸司「神様のパズル」

機本伸司「神様のパズル」ハルキ文庫

今日、ご紹介するのは機本伸司・著「神様のパズル」です。第三回小松左京賞受賞作。

留年寸前の綿貫基一が担当教授から命じられたのは、不登校の女子学生・穂瑞沙羅華(ほみず・さらか)をゼミに参加させるという無理難題だった。天才さゆえに大学側も持て余し気味という穂瑞。だが、究極の疑問「宇宙を作ることはできるのか?」を穂瑞にぶつけてみたところ、なんと彼女は、ゼミに現れたのだ。ゼミでの課題で、穂瑞と同じチームになった綿貫は、宇宙が作れることを立証し、ディベートに挑み、卒業をかけることになるのだが・・・。

人工授精で生まれた16歳の天才物理学者の美少女・穂瑞沙羅華と、”綿さん”こと綿貫基一=落ちこぼれ学生のコンビが、究極の疑問に挑む近未来SF学園青春小説。

沙羅華は、4歳で微分積分を理解し、9歳にして粒子加速器の基礎理論を発表、大学にも飛び級で進学している天才少女。ちょっと性格に難あり。

相方の”綿さん”は、物理を専攻しているモノの、さっぱり分からず卒業も危ない状況。しかし、憧れの女性・保積さんを追いかけて、敷居の高い研究室へ行くという、動機も不純。そんな彼に、救いの手(?)をさしのべたのは担当教授・鳩村。穂瑞沙羅華をゼミに参加させろと言うのだ。なんで、自分がと思いつつも、卒業という文字が頭をちらつき、渋々、穂瑞家を訪問することに。そうして、奇妙なコンビが誕生します。

私自身、「宇宙は”無”から生まれた。」とごく当たり前のように思っていました。でも、よく考えると”無”ってなに?ビックバンはどうやって、誰が起こしたのか、偶然?そんなはずはない。読み進む内に色々と疑問が浮かびます。

時代は少しだけ未来に設定されていて、日常の描写の中にさりげなく未来を感じさせるフレーズがあります。そして、後半の舞台になる「超巨大粒子加速器”むげん”」。二つの山に両端が掛かっているというくらい巨大な建造物です。このあたりはSFっぽいですが、理屈は置いておきましょう。

そして、物語は穂瑞沙羅華の出生の秘密や、「加速器”むげん”」の不具合によるバッシングを絡めつつ、「宇宙は作れるか」の疑問に向けて展開していきます。行き詰まる理論。次第に追い詰められていく沙羅華。そして、クライマックス・・・。

人間はどこから来たのか、なぜここにいるのか。自分は何故生まれてきたのか、何故生きているのか。宇宙の真理という根源的な理由を知らずに、生きていられない。天才が故の苦悩を描いていきます。

そして、物理に間違いはない。どこまでも正しい。それは保障のようなモノ。でも、それは一側面であり、モノごとの見方の一つに過ぎないと言うことに気づきます。

構成が非常に映画的で、終盤の嵐の加速器”むげん”での盛り上がりは秀逸で、一気に読んでしまいました。そして、モノローグで綴られるであろうエピローグもまた、余韻があって良いです。

沙羅華は様々な出来事を通して、人と人を繋ぐ絆を得たのかもしれません。それが宇宙を作っているのだと。そして、宇宙は無限に膨張を続ける。人並みに人間らしく生きる。何が人間らしいのか人並みかは、人それぞれで、それで良いに違いない。宇宙は確かにそこに存在しているのだから。

難解な理論や言葉は出てくるモノの、堅苦しさはまったく感じられません。なにより、そんな難しい理論は、本当はどうでも良いのだと思わせてくれ、人間の優しさに触れられる作品です。

本作は市原隼人・谷村美月主演で映画化もされ2008年6月7日公開です。若干設定は違うようですが、ふたりがどんな活躍を見せてくれるのか楽しみです。

« 「ランボー 最後の戦場」私的映画考Vol.144 | トップページ | 「シューテム・アップ」鑑賞 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 機本伸司「神様のパズル」:

« 「ランボー 最後の戦場」私的映画考Vol.144 | トップページ | 「シューテム・アップ」鑑賞 »

2019年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

最近のトラックバック

無料ブログはココログ