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2008/11/17

クラーク「幼年期の終わり」

今日、ご紹介するのはアーサー・C・クラーク著/池田真紀子訳「幼年期の終わり(光文社古典新訳文庫)」です。 言わずとしれた古典SFの名作です。「2008大学読書人大賞」受賞作品。

21世紀初頭。地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とはなにか?異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿とはいったい・・・。

1953年に発表された本作。「2001年宇宙の旅」と共に、その後のSF界に多大な影響をもたらしたと言われているアーサー・C・クラークの名作SF小説です。その古典とも言える名作小説を1989年に改稿したのが”光文社古典新訳文庫版”「幼年期の終わり新版」です。

時代や世界情勢の変遷を経て、第1部だけが書き直されました。そのことが、著者自身の前書きに記されています。

書き直したとは言え、古めかしい箇所もあるにはありますが、そんなことはどうでも良くなるほど、それ以上に感動的なテーマが新鮮でした。

冷戦は終わったモノの争いや差別が堪えない人類。そこに突如として、高等文明を持った異星人の巨大宇宙船が現れます。オーヴァーロードのカレランは、姿を見せずに、人類を統治し、指示を出します。それを受けるのが国連事務総長のストルムグレン。第1部はすでに統治されていた地球が舞台で、世界連邦化計画が実施されるまでを描きます。

それから50年後を描くのが、第2部。穏やかで裕福な世界となった地球。争いも差別も犯罪もなく、全人類が高等教育を受け、公用語は英語となり、すべてが平等になった世界。しかし、宇宙進出は妨げられ、人類の世界は地球だけになっていました。そうさせるオーヴァーロードの真意とはいったい何なのか?

第3部では、真の目的が明かされ、ついに人類は幼年期が終わり、新しい段階へと登っていくのでした。

第1部ではオーヴァーロードの姿形をめぐっての物語が展開しますが、それは、些細なことであることに気づかされます。どんな異形の外見をしていようが、人類の遠く及ばない文明をもっと異星人なのですから、逆らってみても仕方がない。人類を抹殺しようとしているわけではなく、人類が進むべき方向へ導いてくれているのですから、その真意が分からないまでも、悪ではないはず。

しかし、第2部で明かされるオーヴァーロードの外見は、まさに古来から伝わる悪魔の姿だったのです。最初は拒否反応を示す人々もいましたが、次第に偏見は薄れ、神にも等しいその存在を畏怖の念で観るだけでした。

そして、精神的に進化をした人類に最終段階が訪れます。オーヴァーロードを越える存在。宇宙の深淵への旅。新人類の誕生。種の限界・・・。これが50年以上も前に書かれていたことに驚くと共に感動さえも覚えました。未来の予言もさることながら、無限に広がる人類の希望。その姿を思い描いていた事に素直に感動しました。

SF小説は好きでしたが、クラーク作品を読んだことがありませんでした。が、今後は温故知新で古典と言われる作品も読んでみたいと思います。

光文社古典新訳文庫には、他にも「カラマーゾフの兄弟 」「罪と罰 」「黒猫 」「変身 」等々、海外の名作がラインナップされています。「いま、息をしている言葉で」をコンセプトに訳されていますから、翻訳物独特の読みにくさはなく、しおりに登場人物の名前が書かれていたりして読みやすくなる工夫がされています。ぜひ、一度手にとってご覧ください。

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