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2010/05/04

朱川湊人 「花まんま」

今日、ご紹介するのは朱川湊人・著 「花まんま(文春文庫)」です。なんとなくタイトルが気になって、手に取った「わくらば日記 」の次に読んだ作品。2005年、第133回直木賞受賞作品。

母と二人で大切にしてきた幼い妹・フミ子が、ある日突然、大人びた言動を取り始める。そして、信じられないようなことを言い始める。誰かの生まれ変わりだと。そして、ふたりで小さな旅をし、悲しい過去の出来事を知る。昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、主人公が体験した不思議な出来事を、ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた短篇集(トカビの夜/妖精生物/摩訶不思議/花まんま/送りん婆/凍蝶)。

どの作品も、大阪の路地裏を舞台に、少年少女が体験した、ちょっと不思議で、ちょっと怖い体験が、今は遠い過去になってしまった思い出の物語として描かれます。大きく分類してしまえば、ホラーと言うことになるのでしょうが、良く著者の作品を紹介するときに使われるのが、「ノスタルジックホラー」。

その時代を記憶に持たない私ですが、いつかどこかで見たような、体験したような雰囲気を味わうことができます。古き良き時代。昔懐かしい街並み、風物風俗。人間が人間らしく生きていた時代。人情に厚く、感情をそのままに表現してた時代。現代は、科学が発達し、情報が氾濫している故に、慈しむべきモノが失われてしまったのでしょう。だからこそ、あの時代を懐かしむような作品が求められているのかもしれません。

そんな時代を描きながらも、その生活の中にあるホラーを描いています。ホラーと言えば不気味で怖い印象を受けますが、そこには、人間の性から発する悲劇といえるモノが描かれています。怪奇現象と言ってしまえば、信じがたいモノなのでしょうが、信じたくなるような感情がそこにはあるのです。それは、人間の優しさであり、逞しさであり、暖かさなのでしょう。

そして、その不可思議な体験を通して、人間の生と死が描かれています。貧しいながらも幸福に生きていた人々。でも、すぐ側には死があったのです。幼い頃に身近な日との死を感じた、あの何とも言えない想い。そして、また生まれ来る生命もあったのです。

そんな、様々な思いを、少し複雑な感情が包んでくれる短編集でした。亡くなってしまった友人の弟が夜な夜な現れる「トカビの夜」、奇妙な生き物を育てた少女が経験した人生の悲哀を描いた「妖精生物」、おじさんの葬儀の渦中に起こった不思議な出来事「摩訶不思議」、死の淵を彷徨う人々に安楽死で送り届ける「送りん婆」、年上の女性との出会いを通し大人になっていく少年を描く「凍蝶」。やはり、秀逸だったのは表題作の「花まんま」。読み進めるうちに高まる緊迫感と期待感。そして、家族愛。最後には感動で涙があふれます。

失われてしまった時代、失われてしまった人々、失われてしまった人情等々、大人になった今だからこそ、懐かしく思えるような、ちょっと不思議で、ちょっと怖い。しかしながら、人間の愚かさと、素晴らしさを描いた作品集になっています。

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