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2010/05/07

坂木司「ワーキング・ホリデー」

今日、ご紹介するのは、坂木司・著「ワーキング・ホリデー(文春文庫)」です。「青空の卵」 「仔羊の巣 」「動物園の鳥」の「ひきこもり探偵シリーズ三部作」、「切れない糸 」「シンデレラ・ティース 」に続いて読んだ作品。

「初めまして、お父さん」。元ヤンキーでホストの沖田大和の元に突然現れた少年は、彼の実の息子だという。夏休みの間だけ一緒に暮らすことになったふたり。クビになってしまったホストクラブのあと、大和は宅配便のドライバーに転職する。初めての仕事、初めての親子関係の中で描かれる、ぎこちない父子のひと夏の交流物語。

「ひきこもり探偵シリーズ」では、主人公二人組とその仲間たちの身の回りの謎解きを、「切れない糸」では、クリーニング店を舞台に身近な謎解きを、「シンデレラ・ティース」では、歯科医院での謎解きを披露してきた坂木氏。これまでは、いわゆる日常の謎を扱っているミステリー作品でしたが、本作では、謎解きはほとんどなく、微妙な親子関係をどたばたとユーモラスを交えて描きながらも、あいかわらず最後にはホロッとさせてくれます。

サブタイトルは「エリア1 宛先人不明」、「エリア2 火気厳禁」と言う風に、劇中登場する配達区域の「エリアNo」と運送業界の用語を組み合わせています。

物語は主人公・沖田大和の一人称で描かれていきますが、これがおもしろい。いきなり現れた実の息子・進。思い起こせば、思い当たる節はあったモノの、突然、父親になってしまった大和。その戸惑う様子が、おもしろおかしく描かれます。それも、元ヤンキーですから、口の悪いこと、悪いこと。実際の台詞もそうですが、独白の部分はかなりの口の悪さ。その裏腹さが騒動の元にもなっているのですが。

対照的に、息子の進は、やけに所帯じみた堅実小学生。家事は母親に鍛えられていたらしく、主婦顔負けの腕前。とにかく細かい。俗に言う「良い子チャン」タイプ。新米の父親・大和は今までは、そんなことを気にしたことはありませんから、その食い違うやりとりがおもしろいです。

親子関係というのは、子供が誕生した時から徐々に培われて行くモノなのでしょうが、突然、小学生の子供の父親になるというのはどんな感じなのでしょうか?まして、生活習慣が違うふたりが、突然同居することになるというのは、カルチャーショックと言えば言い過ぎでしょうが、それ程の違いがあるのでしょう。その文化の違いを少しずつ埋めながら、今まで一緒に過ごせなかった時間を埋めるように、ふたりの絆を慈しんでいきます。

泣き所は、ズバリ、別れの時。夏休みが終わってしまう。別れの時が徐々に近づく。期間限定の親子だというのはわかってはいましたが、もうすぐ、離ればなれになってしまう。これまで、しっかりと親子関係を築いてきたと思っていた大和。しかし、本当の親子にはなれていなかったのか?甘やかすっていったい何?わだかまりを解消して、本当の親子になれるのだろうか?感動的なラストシーンが待っています。

突然、親子になってしまったふたりと、彼らを取り巻く味のある人々の繰り広げる、もどかしくも、ドタバタ悲喜劇とほんわかと暖かい人間模様。不器用だけど、やる時はやる男、沖田大和の男塾劇場の開幕です。

『ワーキング・ホリデー』とは、「二国間の協定に基づいて、青年(18歳~25歳または30歳)が異なった文化(相手国)の中で休暇を楽しみながら、その間の滞在資金を補うために一定の就労をすることを認める査証及び出入国管理上の特別な制度である。」

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