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2010/10/28

初野晴「退出ゲーム」

今日、ご紹介するのは初野晴・著「退出ゲーム(角川文庫)」です。「水の時計」に続いて読んだ作品。

穂村チカは、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタは、チカの幼なじみのホルン奏者。音楽教師・草壁先生の指導のもと、吹奏楽の“甲子園”普門館を夢見る2人に、難題が次々とふりかかります。化学部から盗まれた劇薬の行方(結晶泥棒)、六面全部が白いルービックキューブの謎(クロスキューブ)、演劇部との即興劇対決(退出ゲーム)・・・。事件を解決しながら、部員を集めること出来るのか?

以前に読んだ「水の時計」とは作風からうける印象が随分違う作品でした。デビュー作である「水の時計」は、ダーク・ファンタジーという印象の作品でしたが、本作は、学園ミステリーであり、ラブコメであり、ユーモアたっぷりの作品になっています。

主人公であるふたり組、チカとハルタ。幼なじみでしたが、高校に入学して9年ぶりに再会。廃部寸前の吹奏楽部に入部したモノの、弱小すぎて部員が5名しかいません。目指す高見は最高峰ですが、まずは部員集めをしないといけません。

必死になるのには理由があります。かつて、国際的な指揮者として将来を嘱望されていましたが、今は高校教師である草壁先生を、再び表舞台に立たせたいと思っているから。しかし、この3人が奇妙な三角関係になっているからさあ大変。「わたしはこんな三角関係をぜったいに認めない!」チカは奮起します。まさに恋のライバル。

ハルタは美形で、頭脳明晰、本作の探偵役を務めます。ある事件がきっかけで引きこもりにはなっていましたが、なんとか区切りを付けて登校し始める所から始まります。

学校で起こる盗難事件や、パズルの謎を解いたり、と殺人事件のような血なまぐさい事件は起こりませんが、日常の中にある事件を解決しながら、各話の登場人物を部員として勧誘していきます。部員以外にも変人といえるほどのユーモラスな登場人物が物語を盛り上げてくれます。そして、人間関係を紡ぐようにして人々の絆が増えていきます。

最後のエピソード、「エレファンツ・ブレス」は「オモイデマクラ」というドラえもんの秘密道具のような奇妙な発明品から始まる物語。「エレファンツ・ブレス=象の寝息」と名付けられた正体不明の色。その謎を解いた時、そこには感動的でさえある出来事が潜んでいたのでした。思いやり、絆、愛・・・。ラストを飾るにふさわしい内容でした。

本作では、高校1年生の時のエピソードが語られています。その後も、まだまだ本シリーズは続くようですので、今後のふたりの活躍がさらに楽しみです。どんな苦労をして、どんな結果を出していくのか?それは、人生にとって素敵な思い出となり、素敵な寄り道になるに違いありません。青春時代はその時には長く感じますが、振り返ってみると一瞬なのです。“ハルチカ”シリーズ第2弾である、続編「初恋ソムリエ」を楽しみにしています。

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