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2013/10/02

「そして父になる」私的映画考Vol.286

先日、「そして父になる」を観てきました。是枝裕和監督作品。出演:福山雅治(「真夏の方程式」)、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー、二宮慶多、ファン ショウゲン、大河内浩、風吹ジュン、國村隼、樹木希林、夏八木勲他。第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作品。

学歴、仕事、家庭といった自分の望むものを自分の手で掴み取ってきたエリート会社員・良多(福山雅治)のもとに、病院から連絡が入る。それは、良多とみどり(尾野真千子)との間の子が取り違えられていたというものだった。6年間愛情を注いできた息子が他人の子だったと知り、愕然とする良多とみどり。その後、取り違えられた先の雄大(リリー・フランキー)とゆかり(真木よう子)ら一家と会うようになり、血のつながりなのか、愛情をかけ一緒に過ごしてきた時間なのか。良多らの心は揺らぐのだった。

もし、こんな事が現実にあったらと考えると、とても辛く、身につまされる内容の物語です。我が子だと当たり前のように思っている子どもが、実は他人の子どもだった。実際、過去には、そのような事実はいくつもあったのでしょうが、昨今では、取り違えないように病院も、注意し、システム化しているのでしょうが、本作のように悪意のある第三者が、意図的に行えば、いくらでもこのような事件は起こるかもしれません。

ちょっと不思議に思ったのは、6歳の子どもに対して、本当のことをちゃんと説明しないという点。2,3歳の子どもであればいざ知らず、6,7歳であれば、ちゃんと説明知れば必ず理解してくれると思いますが、なぜしないのか?できないのか?する必要がないと思ったのか?

当然のごとく、派手な盛り上がりはありません。静かに淡々と描く中に、主人公たちの葛藤、それぞれの想いがにじみ出てくるという感じの作品になっています。ときおり、良い場面、良い台詞があり、ジーンと心に響きます。

中でも「血を大切に思うのは、親子の絆が希薄だから」という台詞は衝撃的でもありました。仕事の忙しさにかまけ、家庭を顧みず、母親に子育てを任せてきた良多。父子関係はうまくいっているとは思いつつも、どこかがおかしいと思っていた節のある良多。今ひとつ父親になりきれていないことに戸惑いながら、生物学的にも父親でなかったことを知らされた良多は、深く傷つき、さらなる葛藤へと繋がっていくのでした。

子どもの交換の段になり、実の息子との生活が始まりますが、あることをきっかけに、これまで育ててきた息子の想いに気づき、考えをあらため、行動に出るのでした。父親というのは、いつから父になるのか?子どもが生まれた瞬間?母親と違って、実感がないのは本音でしょう。だからこそ、重ねてきた年月、愛情、絆が大切なのでしょう。そして、いつしか本当の父になるのでしょう。

ラストシーンの後、二組の親子はどうなったのか?はっきりとは描かれてはいませんが、余韻のある良いシーンになっています。観る者に結末は託されているのでしょうが、どんなカタチが良いのか、模索は続くことでしょう。いずれにしても、きっと幸せに暮らしていくのでしょう。そう願いたい、そう思いたい。

自分だったら、どうするのだろうか?絆をとるのか?血をとるのか?何が大切なのか?何を尊重すべきなのか?様々な想いを抱きつつ、いろんな事を考えながら鑑賞することが出来ました。泣き所は幾度となく訪れ、観る人の立場、環境によって、違うことでしょう。子どもを持つ親も、これから親になろうとする方も、ぜひご覧いただきたい作品です。

6年間愛情を注ぎ、育ててきたわが子が、もし他人の子だったら? 突然、過酷な現実にさらされた2組の夫婦の姿を映し出すヒューマンドラマ。

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