新潮社ストーリーセラー編集部編「Story seller」
今日ご紹介するのは、新潮社ストーリーセラー編集部編「Story seller (新潮文庫)です。日本のエンターテインメント界を牽引する若手作家7人が様々な物語を織りなす、読み切り中編小説集。
●収録作品
首折り男の周辺(伊坂幸太郎)
プロトンの中の孤独(近藤史恵)
ストーリー・セラー(有川浩)
玉野五十鈴の誉れ(米澤穂信)
333のテッペン(佐藤友哉)
光の箱(道尾秀介)
ここじゃない場所(本多孝好)
以前から読んでいる伊坂幸太郎氏の作品(「首折り男の周辺」)が目当てで購入しましたが、他の作品ももれなく面白く、充実した内容でした。最近本作のようなアンソロジー文庫本が見受けられるようになりました。お気に入りの作家目当てで購入する人が多いのでしょうが、まったく読んだことのない作家に触れることができるので、新規開拓の入門書としても活用できます。
伊坂幸太郎「首折り男の周辺」は、いつもながらの伊坂ワールドと言った趣で、複数の登場人物が交代交代に物語を構成し、最後にはすべてが結びついていきます。そこには人生に対する前向きなメッセージが込められているように感じられました。
秀作揃いの本書ですが、その中でも良かったのは、表題作にもなっている有川浩氏の「ストーリー・セラー」。致死性脳劣化症候群にかかってしまった小説家とその夫の物語。それは、考えれば考えるほど寿命が縮まってしまうという奇妙な病気。衝撃的な幕開け。どうすればいいのか?慟哭の日々。
作家としては致命傷となってしまう症状に対して夫婦はどう挑むのか。そして、感動のラストへ・・・。まるで、一本の映画を観たような感覚でした。映画「私の頭の中の消しゴム」にも似た夫婦の愛情。果たせなかった夢。後悔。そのすべてが込められたラストシーンに感涙。幸せのカタチは様々で、人それぞれ。何が幸せなのか、何をするべきなのか、今を懸命に生きる事の大切さを痛感させてくれる作品でした。
読んだことのない作家の作品を読むときは、どんな物語を、どんなテーマで語ってくれるのかという楽しみがあります。自分に合わなかったらという不安もあるにはあるのですが、そんな思いを吹き飛ばしてくれるような素敵な作品の数々が収録されている本書。オススメの一冊です。
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