カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

新潮社ストーリーセラー編集部編「Story seller」

「Story seller 」新潮文庫

今日ご紹介するのは、新潮社ストーリーセラー編集部編「Story seller (新潮文庫)です。日本のエンターテインメント界を牽引する若手作家7人が様々な物語を織りなす、読み切り中編小説集。

●収録作品
首折り男の周辺(伊坂幸太郎)
プロトンの中の孤独(近藤史恵)
ストーリー・セラー(有川浩)
玉野五十鈴の誉れ(米澤穂信)
333のテッペン(佐藤友哉)
光の箱(道尾秀介)
ここじゃない場所(本多孝好) 

以前から読んでいる伊坂幸太郎氏の作品(「首折り男の周辺」)が目当てで購入しましたが、他の作品ももれなく面白く、充実した内容でした。最近本作のようなアンソロジー文庫本が見受けられるようになりました。お気に入りの作家目当てで購入する人が多いのでしょうが、まったく読んだことのない作家に触れることができるので、新規開拓の入門書としても活用できます。

伊坂幸太郎「首折り男の周辺」は、いつもながらの伊坂ワールドと言った趣で、複数の登場人物が交代交代に物語を構成し、最後にはすべてが結びついていきます。そこには人生に対する前向きなメッセージが込められているように感じられました。

秀作揃いの本書ですが、その中でも良かったのは、表題作にもなっている有川浩氏の「ストーリー・セラー」。致死性脳劣化症候群にかかってしまった小説家とその夫の物語。それは、考えれば考えるほど寿命が縮まってしまうという奇妙な病気。衝撃的な幕開け。どうすればいいのか?慟哭の日々。

作家としては致命傷となってしまう症状に対して夫婦はどう挑むのか。そして、感動のラストへ・・・。まるで、一本の映画を観たような感覚でした。映画「私の頭の中の消しゴム」にも似た夫婦の愛情。果たせなかった夢。後悔。そのすべてが込められたラストシーンに感涙。幸せのカタチは様々で、人それぞれ。何が幸せなのか、何をするべきなのか、今を懸命に生きる事の大切さを痛感させてくれる作品でした。

読んだことのない作家の作品を読むときは、どんな物語を、どんなテーマで語ってくれるのかという楽しみがあります。自分に合わなかったらという不安もあるにはあるのですが、そんな思いを吹き飛ばしてくれるような素敵な作品の数々が収録されている本書。オススメの一冊です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

機本伸司「メシアの処方箋」

今日、ご紹介するのは機本伸司・著「メシアの処方箋(ハルキ文庫)」です。「神様のパズル」に続いて読んだ作品。

西暦2029年。ヒマラヤで氷河湖が決壊した。そして、下流のダム湖に浮かび上がったのは古代の「方舟」だった。こんな高地に存在した文明の痕跡なのか?それとも、あの「ノアの方舟」なのか?調査隊を驚愕させたのは内部から発見された大量の木簡だった。そこには、不思議な蓮華模様が刻まれていたのだ。一体、何者が、何のためにその方舟を残し、メッセージらしきモノを残したのか?

近未来。ヒマラヤ等の高地に存在する氷河が溶け始める可能性があるのでしょうか。温暖化が進めば極地だけではなく、地球上至るところに存在する氷河。それが溶け出す危険性。今すぐではないけれども、近い将来に迫った危機感が、現実味を帯びます。

「神様のパズル」でも思いましたが、映画的に構成されています。冒頭、これから始まる波乱の物語を予兆させるモノローグで始まります。そして、舞台の説明。氷河湖の存在。狂言回したる主人公・パペットの登場。穏やかな情景。一転、静寂を破って鳴り響くサイレン。氷河湖の決壊。押し寄せる大波。一難去って現れる謎の物体・・・方舟。タイトルってな感じ。その後も、クライマックスを目指して、大事件が頻発し、それぞれの映像が思い浮かびます。

方舟らしきモノからは、木簡が発見されます。そこには、蓮華模様が刻まれていました。いったい何なのか?考古学者が現れ、研究を開始しますが、何も分かるモノはありませんでした。文明の名残なのか?文字通り方舟なのか?それともまったく別のものなのか?宗教的な要素が漂います。

そして、もうひとりの主人公・ロータスの登場。言動も態度もとにかく横柄な考古学者。それから物語は急速に動き出します。インターネットを利用しながら、新たに仲間を得ながら調査は進行します。そして、木簡のメッセージが次第にカタチ作られていきます。

メッセージはなんと、メシアの作り方と言っても良い塩基情報だったのです。「メシアの処方箋」でした。救世主を作る?「神様のパズル」では「宇宙は作れるか?」という壮大なテーマでしたが、本作でも奇想天外、救世主を創り出すというのです。考古学から現代生物学へと移り変わっていきます。

この辺りを、リアルに見せながら、物語は進みます。SFとは言え、リアルさがあるから荒唐無稽な物語だとしても、のめり込んでいけるわけです。

救世主を創り出すことは出来るのか?救世主は何を示してくれるのか?救世主・不空の運命は?救世主の下に集った人々は救いを求めている。現代社会に対する5000年前に発せられたメッセージとは・・・。

クライマックスのモブシーン。そして、感動的な結末。真実はわかり得ないけれども、不空の残した何かしらのメッセージは、人類に伝わっていたに違いありません。それは、我々の問題に相違ありません。今からでも遅くはありません、我々に出来ることが必ずあるのですから。

最近、すっかりSF小説にはまっています。ハードSFからスペースオペラ、近未来SF・・・。SF小説には様々なテーマがありますが、本作は近い将来、日常で起こりうるような出来事を題材にしています。人間はどこから来て、どこへ行くのかという普遍的なテーマが込められていてます。

そして、何かを心の拠り所として生きている人々は数多くいるのでしょう。登場人物たちは、真理を知りたいのではなく、自分はいったい何者なのか?メシアはどんなメッセージを示してくれるのか?それを「知りたい」のです。そのために、自分達の今、出来ることをやるだけ。そんな想いが、人々に届いたに違いありません。

現代社会に潜む様々な問題を交えつつ、様々なテーマを見せてくれた本作。宗教的な価値観から、最後は哲学的なテーマへと展開。題材はSFではありますが、堅苦しい感じはありませんので、SFが苦手という方でも、難しくはないと思えます。ぜひ、感動的なラストに新たな「始まり」を感じてください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

私的読書考2008

今年も早いモノで、残すところ1週間となりました。そこで、今年を振り返るシリーズ。今日は読書です。

今年2008年に読んだ本は27冊でした。全部が文庫本。月に2,3冊平均です。2002年に54冊読んだ以降は年々減ってきていて、2003年以降は30冊前後が続いています。

27冊の作者別内訳で多いのは、伊坂幸太郎が3冊、坂木司が3冊、高千穂遙3冊、東野圭吾2冊、原宏一2冊となっています。特に集中して読んだという作家は少なく、新たに読んでみた作家が多かった一年でした。

今年のヒットと言えば、なんと言っても、坂木司「ひきこもり探偵」シリーズ3部作でしょう。「青空の卵」「仔羊の巣」「動物園の鳥」です。

「ひきこもり探偵」シリーズは、坂木司と友人の自称ひきこもり・鳥井真一が織りなす一風変わったミステリーです。殺人事件が起きたり、強盗事件が起きたりはせず、坂木と鳥井は、ワトソンとホームズとなって日常のちょっとした謎を解いていく物語です。

連作短編集になっていて(「動物園の鳥」のみ長編)、その謎解きも面白いのですが、登場人物たちが連鎖的に登場し、友情や信頼を育んでいく様子が、また、興味深い作品になっています。ミステリーとしても楽しめますが、登場人物たちが描く人間模様、そして、心の成長に感動できる作品になっています。

伊坂幸太郎作品も3冊読みました。「陽気なギャングが地球を回す」「死神の精度」「魔王」の3冊。伊坂氏の作品も登場人物も、他作品にひょっこり顔を出すことが多々あります。今年、映画化された「死神の精度」の主人公である千葉も、「魔王」に登場します。同じ作家の作品を読み続けると分かる楽しみの一つです。

伊坂作品に共通しているテーマ性の深さは、あいかわらずで、「死神の精度」では生命の尊さを、「魔王」では社会や政治に対する矛盾を風刺しています。いずれも、人間の業を描いているようで、心のどこかに引っかかるという印象です。続編はまだ読んでいませんが、期待しています。

他にも良い作品に巡り会えました。機本伸司「神様のパズル」、原宏一「床下仙人」、村崎友「風の歌、星の口笛」、森見登美彦「四畳半神話体系」等々。気に入った作品があったら、その作家の作品を続けて読むように心掛けています。そうすることによって、その作家の言いたいこと、テーマが別の面から感じられるかもしれませんから。

クラークの「幼年期の終わり」、モンゴメリの「赤毛のアン」の海外作品も読みました。赤毛のアンは宮崎駿も参加したアニメ作品をチラチラと観たり、日本では劇場用映画として公開された映像作品を観たりはしていましたが、原作小説を読んだことはありませんでした。なので、あらすじは知っていましたが、小説として読むと、また新たな発見があって良かったです。

読書は自分では考えつかないこと、体験できないようなことを見せてくれ、そして、テーマについて考えさせてくれます。映像作品もそれはそれで良いのですが、読書はより想像力をかき立ててくれます。来年もそれほど多くは読めないでしょうが、無理のない程度にいろんな本を読んでいきたいと思っています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

石ノ森章太郎萬画大全集 発刊!その20

先日、「石ノ森章太郎萬画大全集」の第12期分が到着しました。

第12期には、「サイボーグ009」等の前期からの引き続きと、その他、初収録作品が多く収録されています。「テレビ小僧」「レコパル・ライブコミック」「アニマルファーム」等々。

Dsc04787 今回は最後の第12期という事で豪華な特典が目白押しでした。ポストカードや切手シートは毎度のことですが、今回はそれに加えて冊子が3冊、複製原画に、DVDまで同梱されていました。

中でも、「サイボーグ009完結編構想ノート」は凄いです。 生前、石ノ森氏が書きためたプロットを1冊の本にまとめてあります。厚さにして約5cmもあDsc04790ろうかというモノで、ノートや原稿用紙、メモ書きをまとめてあります。達筆というかくせ字というかで、全部を解読するのは相当の苦労が必要でしょうが、資料としては最高の特典です。これが欲しくて、大全集を購入したと言っても過言ではありませんから、最後の最後に嬉しい特典でした。

他にも、「石ノ森章太郎を語る」では、大友克洋氏、竹宮惠子氏をはじめとした漫画家や著名人のコメントや対談を収録しています。「大全集を500倍楽しむガイドブック」には、年表や、1期ごとに9作品をピックアップした作品紹介も収録されています。収録できなかった萬画作品の一覧が掲載されていますが、あまりの少なさに感動。原稿がなかったり、一部しかなかったりとやむを得ず全集Dsc04796への掲載を見送った作品のリストでした。編集作業の苦労がうかがい知れます。

この石ノ森萬画大全集もついに完結。3年に渡っての製作作業に敬意を表したいと思います。そして、つくづく大全集を購入して良かったなあと思いました。3ヶ月に1回5万円超の出費は痛いですが、それに値する全集の出来映えに感謝しています。そして、これが唯一無二の機会であることにも感謝です。

現在は、読んだことのない作品を中心に読んでいますが、読み返したい作品も含めて、じっくりと全500巻を味わいたいと思います。それと、発行中に幾度となく検討してきた、本棚・置き場所の確保がまだ未定になっています。すべて揃った事もありますから、そろそと決定しようと思います。全500冊を並べて見たら壮観なのでしょうね。

ギネスブックにも載った萬画の王様・石ノ森章太郎氏の偉業ここに完結。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

クラーク「幼年期の終わり」

今日、ご紹介するのはアーサー・C・クラーク著/池田真紀子訳「幼年期の終わり(光文社古典新訳文庫)」です。 言わずとしれた古典SFの名作です。「2008大学読書人大賞」受賞作品。

21世紀初頭。地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とはなにか?異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿とはいったい・・・。

1953年に発表された本作。「2001年宇宙の旅」と共に、その後のSF界に多大な影響をもたらしたと言われているアーサー・C・クラークの名作SF小説です。その古典とも言える名作小説を1989年に改稿したのが”光文社古典新訳文庫版”「幼年期の終わり新版」です。

時代や世界情勢の変遷を経て、第1部だけが書き直されました。そのことが、著者自身の前書きに記されています。

書き直したとは言え、古めかしい箇所もあるにはありますが、そんなことはどうでも良くなるほど、それ以上に感動的なテーマが新鮮でした。

冷戦は終わったモノの争いや差別が堪えない人類。そこに突如として、高等文明を持った異星人の巨大宇宙船が現れます。オーヴァーロードのカレランは、姿を見せずに、人類を統治し、指示を出します。それを受けるのが国連事務総長のストルムグレン。第1部はすでに統治されていた地球が舞台で、世界連邦化計画が実施されるまでを描きます。

それから50年後を描くのが、第2部。穏やかで裕福な世界となった地球。争いも差別も犯罪もなく、全人類が高等教育を受け、公用語は英語となり、すべてが平等になった世界。しかし、宇宙進出は妨げられ、人類の世界は地球だけになっていました。そうさせるオーヴァーロードの真意とはいったい何なのか?

第3部では、真の目的が明かされ、ついに人類は幼年期が終わり、新しい段階へと登っていくのでした。

第1部ではオーヴァーロードの姿形をめぐっての物語が展開しますが、それは、些細なことであることに気づかされます。どんな異形の外見をしていようが、人類の遠く及ばない文明をもっと異星人なのですから、逆らってみても仕方がない。人類を抹殺しようとしているわけではなく、人類が進むべき方向へ導いてくれているのですから、その真意が分からないまでも、悪ではないはず。

しかし、第2部で明かされるオーヴァーロードの外見は、まさに古来から伝わる悪魔の姿だったのです。最初は拒否反応を示す人々もいましたが、次第に偏見は薄れ、神にも等しいその存在を畏怖の念で観るだけでした。

そして、精神的に進化をした人類に最終段階が訪れます。オーヴァーロードを越える存在。宇宙の深淵への旅。新人類の誕生。種の限界・・・。これが50年以上も前に書かれていたことに驚くと共に感動さえも覚えました。未来の予言もさることながら、無限に広がる人類の希望。その姿を思い描いていた事に素直に感動しました。

SF小説は好きでしたが、クラーク作品を読んだことがありませんでした。が、今後は温故知新で古典と言われる作品も読んでみたいと思います。

光文社古典新訳文庫には、他にも「カラマーゾフの兄弟 」「罪と罰 」「黒猫 」「変身 」等々、海外の名作がラインナップされています。「いま、息をしている言葉で」をコンセプトに訳されていますから、翻訳物独特の読みにくさはなく、しおりに登場人物の名前が書かれていたりして読みやすくなる工夫がされています。ぜひ、一度手にとってご覧ください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

森見登美彦「四畳半神話大系」

今日、ご紹介するのは森見登美彦・著「四畳半神話大系(角川文庫)」です。

私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを夢見ていたのに、現実はほど遠い学生生活。腐れ縁の悪友・小津には見事に振り回され、サークルではいつもひどい目にあっていた。サークルから逃げ出した5月のある日、不可思議な出来事が起こる。パラレルワールドで繰り広げられる、ほろ苦い青春ストーリー。

「四畳半」と言う言葉の響きになぜか興味をひかれ手に取った一冊でした。「四畳半」と言えば、松本零士の「男おいどん」に代表される、貧乏で、貧相で、報われない若者の物語をイメージします。本作もご多分に漏れず、報われない学生”私”が主人公です。

四話からなる本作。各章の出だしはまったく同じ文章で始まります。二話目を読み始めたときに、「あれ?」と思いました。「読んだんじゃない?」。それもそのはず、主人公同様紛れ込んだパラレルワールド=並行世界なのですから。どこか古風で、それでいてユーモアに満ちた文章に誘われるままに、読み進みます。

新入生の時にどのサークルに入ろうかと思い悩んだ私。候補は4つ。その4つのサークルそれぞれに入ったらどうなっていたか、が描かれます。そこでの主人公の想いはいつも同じで、「他のサークルに入っていたら、バラ色のキャンパスライフがあったのではないか」でした。

しかし、結果はいつも同じ。悪友・小津には振り回され、サークルでは辛い思いをし、樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。いっそ、大学生活をやり直したい!と悶々とし謎の占い師を頼ります。同じ顔ぶれが、少しずつ立場を変えて登場します。なんだかんだとドタバタがあって、各話のラストシーンもまったく一緒(最終四話のみ少し違います)となります。

どんなサークルを選んで、日々、どんな意思決定をしたとしても行き着く先は同じ。それが悪いことなのか、良いことなのか、決めるのは本人次第。誰にも可能性は無限にあるのだから、人生の限界を自分で決めることはないのです。

京都の下鴨神社界隈で繰り広げられる、ちょっぴりほろ苦い、青春の香り漂う、SF的青春学園コメディ。カステラと魚肉ハンバーグが食べたくなり、不思議な体験を求めて京都を訪れたくなる作品です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

荻原浩「コールドゲーム」

今日、ご紹介するのは荻原浩・著「コールドゲーム(新潮文庫)」です。「」に続いて読んだ作者、2冊目の作品。

高3の夏、復讐は突然はじまった。中2時代のクラスメートが、一人また一人と襲われている。高校野球の夏の大会で敗退し、暇をもてあましていた光也の元にそんな噂が流れてきた。4年前クラス中のイジメの標的だったトロ吉こと廣吉の名が浮かび上がってきた。光也たち有志は、「北中防衛隊」をつくり、トロ吉を捜しはじめるのだが、犯行は次々とおこっていく・・・。

4年前にあった、いじめの事実。クラスのほぼ全員が、そのいじめに加わっていたと言います。襲われた同級生たちは、いじめの度合いによって、被害の大きさが違っていました。衣服を切られる、犬を殺される、身体を傷つけられる等々。犯行の前には必ず予告があります。それも、少し奇妙な。そして、事態は最悪の状況になってしまいます。

物語の中心となる、主人公・光也とその幼なじみでもある亮太との関係が、実に微妙で良い関係になっています。亮太は高校にも行かず、働きながら同棲中のこれまた同級生の美咲と暮らしています。光也の向いにある実家に住む父親とは仲が悪く、まったくより着きません。一度はヤクザになろうと思ったこともあるらしく、粗暴。少年科の刑事にも目を付けられています。

亮太はいじめをひどくやっていました。次のいじめのターゲットになりたくない光也は、そんな亮太を止められず、傍観していました。その関係は、17歳になった今でも変わらず、亮太には強く出られない光也。でも、二人の間には強い絆があるようでした。

転校してしまったトロ吉の行方はまったく掴めません。噂ばかりが耳に入ります。ナヨナヨしていた、中2の頃とは違い、身長もグンと伸び、モヒカン刈りで、筋肉隆々だとか。正体を見せずに近寄り、復讐を遂げていくトロ吉。その行為は徐々にエスカレートして行き、ついには最悪の事態になってしまいます。「北中防衛隊」は復讐を止めることは出来るのか?トロ吉の正体は?

あの頃のように「見て見ぬふりをするのは嫌だ」と言う想いが光也にはあります。トロ吉に会って、復讐を止めさせたいのか、何かを告げたいのか。いかにもありそうないじめの情景。そして復讐。4年も経てば体も心も、すべてが変わります。高校三年生。大人になりきれない少年たち。大人になった気分だけの少年たち。彼らはこの事件を通して何を学んだのでしょうか。

この作品を読んでいる間に、「20世紀少年」の映画を観て、直後にコミックを全巻読み返していました。2つの作品が、奇妙に重なり合って、なんだか、不思議な気持ちになりました。

思い出したくないあの頃、やるせない真実、そして、驚愕の結末。謎解きの要素もありながら、リアルな緊迫感が忍び寄る、サイコ・サスペンスになっています。「噂」「コールドゲーム」と作者のサスペンスを読みましたが、実に興味深い作品でした。今度は、ユーモラスな作品も読んでみようと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

坂木司「動物園の鳥」

 

今日ご紹介するのは 坂木司・著「動物園の鳥(創元推理文庫)」です。ひきこもり探偵シリーズ一作目「青空の卵」、二作目「仔羊の巣」に続く、三部作の完結編。

春の近づくある日、鳥井真一のもとを二人の老人が訪ねてきた。年上の友人でもある木村栄三郎さんと、その幼馴染みの高田安次朗さんだった。高田さんがボランティアで働く動物園で、野良猫の虐待事件が頻発しているという。さっそく鳥井と坂木は動物園へ出向き捜査を開始。鳥井が掴んだ真実は・・・。

前2作は、連作短編集でしたが、三作目の本作はシリーズ初の長編。坂木と鳥井は、ワトソンとホームズとなって謎を解くと言う図式はあるのですが、殺人事件が起きたり、強盗事件が起きたりはせず、日常のちょっとした謎を突き詰めていくと言う感じです。

ひきこもりの鳥井真一が、今までの事件を通して出会い、紡ぎだした輪。緩やかだけれど確かな絆。その友人知人たちが登場し、事件を解くのですが、そこに、鳥井の過去、ひきこもりとなった出来事が絡んでいきます。思い出してしまう中学校時代の悪夢のような日々。

行間はあいかわらず見事で、ここぞという瞬間には、空白行が挿入されています。行間から溢れ出るような想いが伝わってきます。静かに近づく別離の予感。いまにも泣き出しそうなほどの決意。こころが弱い人間。支えられて生きてきた。相手を守っているつもりが、相手にすがっていた自分。

そして、旅立ちの時。事件を解決した後、とうとう別れの時が来ます。鳥井は外の世界に飛び立てるのか。みんなが、大人にならなければいけない。

様々な人間模様を描いてきたこのシリーズ。本作にもいろんな人間が登場します。その中に、自分の姿を見つけることでしょう。色々な人間がいるように、色々な考え方があります。それはごく当たり前のことでなのですが、気づいていないことが多いのです。

何が正しく、何が間違いか、それは分かりませんが、日本人に欠けている思われる、宗教観。道徳観≠宗教観なだけに、壊れる常識。そこから派生する出来事、事件。みんなが優しさを持って、愛情を持って、思いやる心を持てば、きっと世界は変わるに違いない、そう思わせてくれます。

ミステリーと言う枠を越え、現代社会の歪み、人間の心の機微を見事に描いたヒューマンドラマ。感動のラストをぜひお読みください。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

東野圭吾「容疑者Xの献身」

「容疑者Xの献身」文春文庫

今日ご紹介するのは、東野圭吾著「容疑者Xの献身」です。 天才物理学者・湯川シリーズ第一作「探偵ガリレオ」、第二作「予知夢」に続く、第三作にして第134回直木賞受賞作。

天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。そんなある日、彼女たちが前夫を殺害したことを知った石神は、二人を救うため完全なアリバイ工作を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての同級生だった物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになるが・・・。

今までのガリレオシリーズは科学トリックを使った連作短編集でしたが、本作はシリーズ初となる長編。おまけに科学トリックは登場せず、巧妙に仕掛けられたアリバイ工作から、完全犯罪へと至る緻密な頭脳戦が繰り広げられます。殺人事件を中心に物語は展開しますが、そこで描かれているのは深く大きな愛。そして友情。

かつての理解者であり、親友でもあった湯川と石神。天才同士だからこそ、理解し合える部分があったのでしょう。だからこそ、湯川は、こんな事件を起こしてしまった石神の動向に対して、苦悩します。愛するが故の犯行。しかし、それは決して許されることではない。葛藤する湯川。そして、もう一人の親友であり、刑事でもある草薙。彼の存在もまた、湯川の苦悩の要因となっていきます。

前シリーズのような爽快な推理とは違い、人間を深く感動的なまでに描き、苦悩し、推理を告げます。これほどまでに深い愛情が存在するのでしょうか。それは本当に愛なのでしょうか。

で、本作は2008年10月4日の劇場映画として公開されます。TVドラマ「ガリレオ」のメンバーが勢揃いし、この深く悲しい物語を見せてくれることでしょう。

「容疑者Xの献身」2008年10月4日公開
監督 : 西谷弘
原作 : 東野圭吾
出演 : 福山雅治 、 堤真一 、 松雪泰子 、 金澤美穂 、 柴咲コウ他

小説を読んでから映像化されたモノを見るのが、私の好みではありますが、配役からしてかなりイメージの違う作品になっているのではないかと予想されます。まったく別物としての鑑賞が必要でしょう。

映画の公開も待ち遠しいですが、今秋のTBS金曜ドラマでは、「流星の絆」もスタート。こちらはまだ読んでいませんが、楽しみです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

村崎友「風の歌、星の口笛」

村崎友「風の歌、星の口笛」角川文庫

今日、ご紹介するのは村崎友・著「風の歌、星の口笛」です。第24回横溝正史ミステリ大賞受賞作。書店で何となく手にした一冊。なぜか、夏になるとSF小説が読みたくなります。何となく冒険心というか、未知なるモノへの好奇心が湧き上がるのでしょうか、理由はよく分かりません。

3人の主人公が登場し、3つのストーリーが並列に進みます。一見関係のなさそうに進む、それぞれの物語。

1つめは、マムによって高度に管理された星。天候や電気、食料等々、すべてが、神とも呼べるマムに管理されていたはずの世界。しかし、マム製のメカ・ペットが死んだ?そんなことはあり得ない。捜査に乗り出す私立探偵のトッドだったが・・・。

2つめは、地球から人工惑星プシュケを目指していた地質学者のジョー。250年の旅の果てに辿り着いた星はすでに滅んでいた。砂漠化し動くモノは何もない。出入口のない建物の中で見つけたミイラ化した死体。いったいこの星で何が起こったのか・・・。

3つめは、地球。交通事故で頭を打って入院していたセンマ。退院の日に恋人のスウに会いに行くが、彼女はどこにもいない。誰も彼女を知らない。事故の後遺症で記憶がおかしくなってしまったのか、それとも・・・。

それぞれの物語は、それぞれの時代で、それぞれの謎を孕みながら展開していきます。人工惑星、コールドスリープ、外宇宙探査船、滅び行く星、密室殺人、宇宙歴、記憶ピアス等々・・・。SFっぽいキーワードが次々に出てきて、胸躍ります。そして、重要なキーワードとなる、歌。タイトルにもなっている風の歌、星の口笛。

宇宙探査機・ボイジャーが人類のメッセージとして、様々な言語の挨拶と音楽を記録盤に収録して搭載したという。いつか、どこかの人類以外の誰かに拾われることを夢見て・・・。そのメッセージを真似て、探査船クピドから船外へと音楽を流すジョー。それは、ちょっとしたいたずら心。そして、何故か降り立った砂漠の星を懐かしく感じ、口ずさんでしまう歌。母親が歌ってくれた子守歌。

一見、ばらばらだった物語は次第に結びつき、そして、大団円へと向かいます。最後の謎解きでも、すべてがはっきりとは語られません。それぞれの主人公はいろんなモノをなくし、そして何かを得ていきます。

宇宙の時間の中では一瞬の出来事かもしれませんが、 人間にとっては永遠にも等しい時間を超えて、約束の地で相まみえることができた魂=遺伝子。そこにあったのは、おおいなる愛でした。

大きなスケールで描くSFミステリー。すべての物語が一つになったとき、そこに描かれていた悲しい運命と永遠の愛に感動できる作品になっています。

・・・絶対にまた会える。僕らはそういう運命なんだ・・・

| | コメント (0) | トラックバック (0)

楽天ブックスDVD23%OFF

私は小説やコミックなど、雑誌以外の書籍、CD、DVD、Blu-ray DISCはほとんどネットで購入していますが、ポイント還元もあるので楽天ブックス を利用しています。

以前、楽天ブックスでは、『予約・新作のDVDを26%OFF』での販売をしていましたが、現在は、『予約DVDを23%OFF』になっています。以前は、予約購入時と発売日から1ヶ月間が26%OFFでしたが、現在の23%OFFは予約購入時のみ。発売日以降は通常の10%OFFの価格になっています。

予約時の23%OFFでも他サイトに比べても安価だとは思いますが、発売日以降の10%OFFは他サイトの方が安価な場合が多くなってきています。予約できればいいですが、作品によっては、発売日までに「売り切れ」になることもあるようで、早めの購入が必要です。まあ、それによって収益を確保しようと言うことなのでしょうが、ちょっと残念ではあります。

購入すれば、楽天スーパーポイント1%付きますし、1500円以上の場合は、送料無料になりますから、お得なことは間違いありません。どうせ買うなら安い方が良いですし、ポイント還元があれば言うことありません。

とは言え、最近はめっきりDVDやBlu-ray DISCを買わなくなりました。TSUTAYA DISCAS等でDVDレンタルするようにもなりましたし、WOWOWで放送するハイビジョン、5.1ch放送の映画を録画するようにもなりました。なので、あまり買わなくなったのは事実ですが、たまには買うこともありますから、発売情報が入ったら、購入先を吟味してなるべくお得な買い物をしたいモノです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

機本伸司「神様のパズル」

機本伸司「神様のパズル」ハルキ文庫

今日、ご紹介するのは機本伸司・著「神様のパズル」です。第三回小松左京賞受賞作。

留年寸前の綿貫基一が担当教授から命じられたのは、不登校の女子学生・穂瑞沙羅華(ほみず・さらか)をゼミに参加させるという無理難題だった。天才さゆえに大学側も持て余し気味という穂瑞。だが、究極の疑問「宇宙を作ることはできるのか?」を穂瑞にぶつけてみたところ、なんと彼女は、ゼミに現れたのだ。ゼミでの課題で、穂瑞と同じチームになった綿貫は、宇宙が作れることを立証し、ディベートに挑み、卒業をかけることになるのだが・・・。

人工授精で生まれた16歳の天才物理学者の美少女・穂瑞沙羅華と、”綿さん”こと綿貫基一=落ちこぼれ学生のコンビが、究極の疑問に挑む近未来SF学園青春小説。

沙羅華は、4歳で微分積分を理解し、9歳にして粒子加速器の基礎理論を発表、大学にも飛び級で進学している天才少女。ちょっと性格に難あり。

相方の”綿さん”は、物理を専攻しているモノの、さっぱり分からず卒業も危ない状況。しかし、憧れの女性・保積さんを追いかけて、敷居の高い研究室へ行くという、動機も不純。そんな彼に、救いの手(?)をさしのべたのは担当教授・鳩村。穂瑞沙羅華をゼミに参加させろと言うのだ。なんで、自分がと思いつつも、卒業という文字が頭をちらつき、渋々、穂瑞家を訪問することに。そうして、奇妙なコンビが誕生します。

私自身、「宇宙は”無”から生まれた。」とごく当たり前のように思っていました。でも、よく考えると”無”ってなに?ビックバンはどうやって、誰が起こしたのか、偶然?そんなはずはない。読み進む内に色々と疑問が浮かびます。

時代は少しだけ未来に設定されていて、日常の描写の中にさりげなく未来を感じさせるフレーズがあります。そして、後半の舞台になる「超巨大粒子加速器”むげん”」。二つの山に両端が掛かっているというくらい巨大な建造物です。このあたりはSFっぽいですが、理屈は置いておきましょう。

そして、物語は穂瑞沙羅華の出生の秘密や、「加速器”むげん”」の不具合によるバッシングを絡めつつ、「宇宙は作れるか」の疑問に向けて展開していきます。行き詰まる理論。次第に追い詰められていく沙羅華。そして、クライマックス・・・。

人間はどこから来たのか、なぜここにいるのか。自分は何故生まれてきたのか、何故生きているのか。宇宙の真理という根源的な理由を知らずに、生きていられない。天才が故の苦悩を描いていきます。

そして、物理に間違いはない。どこまでも正しい。それは保障のようなモノ。でも、それは一側面であり、モノごとの見方の一つに過ぎないと言うことに気づきます。

構成が非常に映画的で、終盤の嵐の加速器”むげん”での盛り上がりは秀逸で、一気に読んでしまいました。そして、モノローグで綴られるであろうエピローグもまた、余韻があって良いです。

沙羅華は様々な出来事を通して、人と人を繋ぐ絆を得たのかもしれません。それが宇宙を作っているのだと。そして、宇宙は無限に膨張を続ける。人並みに人間らしく生きる。何が人間らしいのか人並みかは、人それぞれで、それで良いに違いない。宇宙は確かにそこに存在しているのだから。

難解な理論や言葉は出てくるモノの、堅苦しさはまったく感じられません。なにより、そんな難しい理論は、本当はどうでも良いのだと思わせてくれ、人間の優しさに触れられる作品です。

本作は市原隼人・谷村美月主演で映画化もされ2008年6月7日公開です。若干設定は違うようですが、ふたりがどんな活躍を見せてくれるのか楽しみです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

坂木司「青空の卵」

今日ご紹介するのは 坂木司・著「青空の卵(創元推理文庫)」です。

坂木司と友人の自称ひきこもり・鳥井真一。複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな鳥井を、外の世界に連れ出そうと日夜頑張っている。そんなある日、スーパーで出会った女性にと知り合うことになる。一方、男性ばかりを狙ったストーカー事件が多発するが・・・。坂木は身近に起こった様々な謎を問いかけ、鋭い観察眼を持つ鳥井は、少ない手がかりから次々と謎を解く、一風変わったミステリー。

坂木と鳥井は、ワトソンとホームズとなって謎を解くと言う図式はあるのですが、殺人事件が起きたり、強盗事件が起きたりはせず、日常のちょっとした謎を突き詰めていくと言う感じです。

しかし、鳥井はひきこもり。仕事はコンピュータ関係で家にいながらにして喰っていける様子。そんな鳥井には悲しい過去があり、それが原因で人間不信がはじまり、親に捨てられた悲しみ、裏切り、絶望、孤独に苛まれていき、ひきこもりになっていったのでした。

そんな鳥井に坂木はべったり。高校時代の同級生で警察官の滝本の台詞で、「本質的な主導権は変わってない」とのこと。横柄な物言いで、一見、態度の大きい鳥井でしたが、気弱な坂木に対しては、絶対の信頼を置いているのが分かります。そこが、本質的な主導権の在り方なのでしょう。

「夏の終わりの三重奏」では、ストーカー事件を追い、「秋の足音」では、盲目の青年の悩みを解消し、「冬の贈りもの」では歌舞伎役者への贈り物の謎を解き、「春の子供」では、言葉を話せない少年を親元に届けます。

それぞれのエピソードで、坂木はなにかと首を突っ込みます。時としてお節介とも取れる行動をしますが、そこがこの物語のポイントとなるのでしょう。鳥井から絶対の信頼を置かれている坂木は、良い行いをしようと心掛けています。坂木は鳥井の良心であるからです。だから困った人がいたら手を貸さずにはいられないのです。

「優しさ」と言う言葉はありますが、見ず知らずの人に優しくしてあげられるでしょうか。煙たがられたり、怪しまれたり、そんなことを恐れているばかりで、なにもしてあげられない。困っているのかもしれないけど、手をさしのべてあげられない。そんな経験が誰にもあるはず。でも、そんな時、ちょっとの勇気を出して優しくしてあげればいい。それが、新しい絆になっていくのでしょう。

4つの中編と1つの短編からなる連作小説集ですが、登場人物が、次回以降のエピソードにも登場することによって、人と人との輪が繋がっていくように思えます。引きこもりだったはずの鳥井。でも、様々な出来事を通して係わっていく中で、人々との絆とも言える人間関係が生まれていくのです。そして、少しずつ変わっていく。いつかきっと青空を見上げることが出来るはず。

行間が見事で、行間から溢れ出るような想いが伝わってきます。それは文字通りの行間で、ここぞという瞬間には、空白行が挿入されています。それが余韻となって、その想いが伝わってくるのです。三人称で進む物語も、ときおり坂木の一人称になります。それはあまりにも感情が昂ぶったとき。押さえきれない感情を表現しています。

ミステリーだと思って手にした本書でしたが、人間の心の機微を見事に描いたヒューマンドラマでした。本作「青空の卵」は三部作の一作目で、読み終えた後には爽やかな感動があり、すぐに続きが読みたくなりました。なので、二作目「仔羊の巣」、三作目「動物園の鳥」を発注しました。まだ読んでいませんが、この先、ふたりはどんな物語を見せてくれるのか、楽しみです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

原宏一「床下仙人」

今日ご紹介するのは、原宏一・著「新奇想小説・床下仙人(祥伝社文庫)」です。

念願のマイホームに入居して早々、「家の中に変な男がいる」と妻が訴えてきた。仕事、仕事でほとんど家にいない主人公の”おれ”。ノイローゼでは?とおもっていたそんなある夜、”おれ”は、洗面所で歯を磨いている男を見た。髭を仙人のように伸ばした男だ。その男の正体はいったい・・・(「床下仙人」)。

表題作「床下仙人」にはじまり、システムのガードの甘さから始まる復讐劇「てんぷら社員」、男性社会へと挑む女性専用マンションの住人たち「戦争管理組合」、派遣社員がいるのなら派遣社長がいてもいいじゃないか「派遣社長」、家族から追い出された初老の男性と家族を捨てた女子高生の奇妙な境遇を描く「シューシャイン・ギャング」の5編からなる短編集。

いずれの作品も、ほんの些細なきっかけから、ちょっとした発想の転換から、物語は始まります。主人公はどこにでもいそうなサラリーマン。しかし、ワーカホリック気味で、ちょっと仕事が過ぎる感じ。私はそれほど仕事に没頭するタイプではないですが、それでも、主人公に感情移入出来てしまうのは、立場的には同じサラリーマンであるからでしょう。

夫が悪い、妻が悪い、会社が悪い、社会が悪い、ぜーんぶひっくるめて社会構造が悪いと言いはなってしまうのはカンタンですが、本当はそうではなく、誰も悪くないんでしょう。あえて、誰が悪いかと言えば、結局は自分の中に原因があるはずで、分かってはいるけれど、認めたくないのが現実。それが悲哀となって身に染みるのでしょう。

「シューシャイン・ギャング」では、リストラにあい、家族から追い出された初老の男性と、家族を捨てた女子高生が、渋谷の雑踏の中、新しい商売を試みる様子を描きます。家庭・家族からはみ出したふたりが、こんな世知辛い世の中でも、交流を重ね、信頼し、愛と言う絆で結ばれていく、心温まるラストシーンが良かったです。

不況不況と叫ばれている昨今、景気は上向きなんて言われてはいますが、実感がありません。物価は上がる、税金、社会保険は上がる、でも給与は上がらない。そんな厳しい世の中ですが、前向きに努力を怠らなければ、希望はきっとあるはず。

「床下に仙人がいる?」と言うイメージのタイトルが気になって、手に取った本書。ちょっと不可思議なタイトルからくる表面上の面白さもさることながら、その裏に潜む現代社会の歪みともいえる、不条理さをリアルに描き、さらに、どこにでもありそうな家庭が舞台になっているので、会社人間の悲哀がリアルさを増しています。

現代日本を風刺とユーモアで笑い飛ばし、その背景に潜む恐怖とは言えないけれど、なんとも言えない不安を描く新奇想小説集。ご一読あれ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

楽天ブックス発注システム変わる!

楽天ブックスの発注システム変わって、おかしなことになっています。

私は雑誌以外の書籍、DVD、CDのほとんどを楽天ブックスで発注しています。その楽天ブックスで、2007年12月から発注システムが変更になったらしいのです。その辺りの告知がされていなかったか、気づかなかったので、まったく分かりませんでした。

ネットショッピングの場合、だいたいがクレジットカードで決済するわけですが、ここがおおきく変わったのです。カード会社(楽天カード)のサイトから、確定前の利用明細を確認しましたら、予定にない明細があったのです。

私はマイツールで個人の資金繰りをやっていますが、そこには利用日、決済日、カード会社、利用先等の詳細を入力しています。そこに無いデータが、次月分の明細にあったのです。

そこで、楽天ブックスに問い合わせしてみました。「この明細は何なのか?なぜ、こうなったのか?事前にこうなることを通知してあったのであれば、そのメール等の発信日時をお知らせいただきたい(問い合わせ日:2007年12月25日)」と。

返答はこうでした。「弊社におきましては、2007年12月9日より決済システムが変更されました。それにより、12月9日以降に出荷となりました商品につきましては、ご注文番号単位ではなく、出荷された商品ごとに請求となっておりますが、上記商品につきましては、決済システム変更前に出荷となりました為、現在未決済の商品のみを決済システム変更に伴い、ご請求をさせていただく形となりました。(回答日:2008年1月2日)」

今までは、注文番号単位での決済でした。既発売分、予約分を併せて発注した場合、最終の予約分が納品された後に決済、カード会社へ通知というカタチでした。

ところが、2007年12月の決済システムの変更に伴い出荷伝票単位での決済になったということなのです。

で、まだ、完納されていない注文番号の中で、12月以前に出荷されている分をすべて請求したということなのです。

こちらとしては、決済システム変更前に発注していますから、その契約は成立したと言うことで、決済は従来のやり方でするべきだとは思います。なにより、このことが、サイトのどこを探しても見つからない、ヘルプを見ても載っていないということが問題だと思うのです。すべての人にメールで通知するのも大変でしょうから、サイト上でお知らせするのが筋なのではないでしょうか?

マイツールでの資金繰りデータを変更するのは、良い手間をかけさせてもらいました。まあ、すでに出荷され手元にあるわけですから、支払をしないという訳にもいかないのでしょうが、告知なし、問い合わせの返答に時間が掛かる、電話は繋がらないでは、サービスとしては、かなりの問題を含んでいるように思えます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

私的読書考2007

今年を振り返るシリーズ。今日は読書です。

今年2007年に読んだ本は26冊でした。ほとんどが文庫本。2002年に54冊読んだ以降は年々減ってきていて、2003年以降は30冊前後が続いています。

26冊の作者別内訳で多いのは、東野圭吾が8冊、伊坂幸太郎が4冊、筒井康隆が3冊(「七瀬ふたたび」他)となっています。東野圭吾では「浪花少年探偵団」シリーズ2冊、「同級生」「鳥人計画」「虹を操る少年」「時生」他を読みました。

浪花少年探偵団」「同級生」「鳥人計画」は殺人事件を発端に始まる事件を描いています。「鳥人計画」はスキージャンプ競技を題材にしている作品で、犯人が分かっている内に進む面白い展開。「同級生」は、主人公の同級生が事故死、その後高校で起こる連続殺人事件。主人公の少年の心情表現の移り変わり、見え隠れする真実が興味深い作品でした。

虹を操る少年」「時生」は殺人ミステリーではなく、サスペンスの部類でしょう。光楽という新しい音楽と楽器を作り出した少年をとりまく事件を描きます。争いのない新しい世界を作り出せるのか?「時生」は未来から来た少年・トキオとその父の若かりし頃の物語。感動的なラストです。

昨年から読み始めて、今年2番目に多く読んだのは伊坂幸太郎作品。デビュー作「オーデュボンの祈り」に始まり「アヒルと鴨のコインロッカー」「チルドレン」「グラスホッパー」の4作品を読みました。伊坂作品に共通しているのはテーマ性の深さでしょう。言いたいことが強烈に物語に反映しているように思います。特に人間の業を描いているように思えて仕方がありません。今後も読んでいきたい作家のひとりです。

他にも良い作品に巡り会えました。「」荻原浩、「水の時計」初野晴、「螢女」藤崎慎吾、「からくりからくさ」梨木香歩。新たに読んでみた著者が多かったのも今年の特徴かもしれません。

読書は自分では考えつかないこと、体験できないようなことを見せてくれ、そして、テーマについて考えさせてくれます。映像作品もそれはそれで良いのですが、読書はより想像力をかき立ててくれます。来年も多くは読めないでしょうが、無理のない程度にいろんな本を読んでいきたいと思っています。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ココログ出版への道 Vol.7

Dsc01826 正式注文をして、約4週間、念願の書籍として到着しました。

「発送いたしました」のメールから、5日後にクロネコメール便にて到着。さっそく封を開けてみますと、梱包材にくるまれて書籍が入っていました。「スタイリッシュグリーン」の表紙デザインが鮮やかです。紙質も上々。厚さはほぼ1cm。総ページ数は196p。

表紙には「夢のつづき It's a wonderful world~Dsc01834 私的映画考~」と言う文字。中表紙にも同じ文字があり、続けて目次になります。目次には、2年間にわたって書き綴ったお気に入りの映画たちのタイトルが。良く書いたモノだなあとつくづく思います。

目次が終わると本文。最初の日付は2005.04.24。「私的映画考」についての記事です。ページをはぐって次の記事は1本目「僕の彼女 を紹介します」。同じく日付は2005.04.24。記念すべき私的映画考1本目。ブログを始めた頃は、一日Dsc01836に何件も書いたことがありました。それにブログを始めるに当たってどんなことを書こうか、カテゴリーはどうしようか、なんて色々と企画を立てていたなあ、なんてことを思い出します。

パラパラとめくると、ああ、こんな記事も書いたなあとか、こんな文章なのかとか、自分で書いたはずの文章なのに驚きや感動があります。ネット上の記事としての検索性はありませんが、書籍としてカタチにするのはまた特別な想いがあります。1本1本にそれなりの思い入れがあり、思い起こすのにも良いかもしれません。

100本目は「フェイス/オフ」。いまだに一番好きな作品。そして、Dsc01837 最後は「あとがき」。ココログ出版制作のために書いた記事。「大好きな映画に出会えますように。」と言う文で締めくくられています。少々手間は掛かりましたが、本当にココログ出版に注文して良かったなあと思いました。

このブログ「夢のつづき」を始めて2年半。映画を中心に沢山の記事を書いてきました。これからも、書き続けていくつもりですので、どうぞよろしくお願いします。そして、次の100本を書いたら2冊目の本を作ります。まだまだ書ききれていない大好きな作品も沢山ありますし、これから出会う映画もあるはず。夢はまだまだ続きます。(了)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

初野晴「水の時計」

今日ご紹介するのは初野晴(はつの せい)著「水の時計」です。

本作はオスカー・ワイルドの「幸福の王子」の要約で始まります。金箔に覆われた王子の像。宝石もちりばめられていた。王子は自分の身体の金箔や宝石を貧しい人々に運んでくれと燕に頼みます。燕は旅立つ日を遅らせて、運び続けます。そして、運ぶ物がなくなった時、燕は力尽き、みすぼらしくなってしまった王子の像は溶かされてしまいます。しかし、鉛の心臓だけは溶けずに残りました。

誰もが一度は聞いたことのある「幸福の王子」。本作はこの物語をモチーフに描かれていきます。

暴走族の幹部である少年・高村昴は、ある事件の容疑者として追われていた。そんな時、謎の老人・芥(あくた)が現れ、窮地を救ってくれた。連れて行かれたのは山の上にそびえ立つ廃病院。そこで待っていたのは機械に繋がれた少女・葉月。

葉月は医学的に脳死と診断されていた。しかし、月明かりの夜に限り、特殊な装置を使って言葉を話すことができる。延々と死に続ける少女。生きているのか、死んでいるのか、分からなくなってしまう昴。あまりにも残酷な現実。葉月が昴に望んだのは、自らの臓器を、移植を必要としている人々に分け与えることだった。

かすかに聞こえる葉月の声。最初は戸惑いながらも、今までしてきたことの贖罪をするかのように、臓器をひとつ、またひとつと運ぶ昴。昴には親はなく、ただ一人の肉親の兄は回復の見込みもなく病院に・・・。その姿を葉月に重ねる昴。その昴を目の敵にして、執拗に追い続ける暴走族の幹部の一人高階。生活安全課の堀池と魅力的な登場人物が並びます。

適合者リストの中から選択するのも昴の仕事。どんな人にどの臓器を提供するのか?物語は昴と葉月を第三者的にしながら展開します。視力が徐々に弱くなっていく少女、海外での腎臓の移植を考えているOL。それぞれに、それぞれのドラマがあるのです。そして、昴の中学時代の恩師は、心臓病に苦しんでいた・・・。父親のように慕っていた恩師。生きて欲しいと懇願する昴。感動的で、涙が溢れそうでした。そして、感動的なラストシーン。

月の光と共に話す少女と暴力的ではあるが、命の尊さを知る少年。ふたりの因縁は・・・。そして、「水の時計」は止まってしまうのか・・・。透明感あふれる筆致で生と死の狭間を描き、生きる意味を問う感動作。ファンタジックに現代の寓話をミステリーとして描いた本作。オススメです。

きっとまだ、できることがあるはず。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ココログ出版への道 Vol.6

修正できるのか分からないまま、ダメモトで、ココログ出版へメールを送ってみました。

修正依頼のメールを送って2日後にメールにて返信が来ました。「修正箇所が少ないので弊社で対応致しました」とのこと。と言うことは、今回は無料で修正しましたが、修正箇所が多い場合は、再度見積料がかかると言うことなのでしょうか?はっきりしたところは分かりませんが、私の場合は2箇所の修正が無料でできたと言うことで、良しとしましょう。

続けて新たに見積書と確認用PDFファイルのアドレスが送付されてきましたので、修正箇所をチェックします。

写真が1枚抜けていたのと、箇条書きが改行されていないという2箇所の修正を確認。これで確認終了です。

見積メール到着から2週間が有効期間になっていますが、当初の期間から、修正後の再見積メール到着日の2週間後に期間が変更になっていました。

すべての確認が終了しましたので、あとは注文部数を決定して、正式な注文をするだけとなりました。(つづく)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ココログ出版への道 Vol.5

申込みをして2日後にメールにて見積書と確認用PDFファイルのアドレスが送付されてきました。さっそく内容を確認します。

メールでも見積書の内容は確認できますが、閲覧用アドレスを開くと詳細が確認できます。見積書の有効期限はメールの日付から2週間です。とりあえず3冊の見積書の金額は7900円ほど(冊数の変更は可)。カラーorモノクロ、無線綴じor上製本、ページ数によって変動します。総ページ数は196ページになりました。

次にPDFファイルの内容を確認します。表紙PDFと本文PDFに分かれています。表紙は申込み時のデザインに、ブログのタイトル、サブタイトル、アドレス等が配置されています。なかなか格好良いです。

本文PDFは、1ページ目が中表紙・タイトルで、2ページ目からは目次が続きます(有無は選択可)。続いてブログ本文が始まります。本文以降はページ番号が記されています。写真を1枚という指定にしましたので、右上に写真が1枚表示され、その下から、日付、記事タイトル、本文と続きます。記事ごとに改ページを指定したので、記事が変わるごとに改ページされています。

当初のもくろみでは、見開きで1件の記事になるように想像していましたが、文章の長さによって、1ページの記事も沢山ありましたので、その修正はあきらめました。

この際、誤字脱字は気にせず、レイアウトのみの確認をしました。間違いのない写真が入っているかを確認。この写真はアフィリエイトで登録したDVDのパッケージ写真になります。ココログ出版の説明文を読んだときに「アフィリエイトをご利用の場合は書籍には反映されません。」とあったので、写真は載らないのかもと思っていましたが、「画像をリンクして使用している場合、申込時にリンク先に画像がなければ(リンク切れを起こしている場合)、書籍に画像を掲載することはできません」とあったので、適用されたのでしょう。

確認したところ1枚抜けていましたので、ブログを修正。もう1点、気になったのが箇条書きになっていた文章がダラダラと続けて印字されていた点。改行されていないのです。そのページも修正しました。

修正した結果をPDFファイルに反映させるためにはどうしたらいいのだろう?閲覧アドレスには特に修正に関しての注記はありません。メールの本文にはこんな感じに記載されていました。

※ココログ出版をご注文される場合、確認用PDFで確認いただいた
 デザイン・レイアウト通りに製品化いたします。
※ココログ出版は受注製作のため、ご注文いただいた後のお客様都合による
 デザイン・レイアウトの変更及びキャンセルは承っておりません。
 誠に申し訳ございませんが、あらかじめご了承ください。

まだ、正式に注文したわけではありませんから、修正は効くようにも思えますが、申込者の都合による修正・変更は受け付けないとも取れます。ですが、ダメモトで、2点の修正をしたところで、ココログ出版へメールを送ってみました。(つづく)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ココログ出版への道 Vol.4

いよいよココログ出版の申込みです。

申込みフォームからの基本情報を入力していきます。ブログのアドレスに始まって、本にする期間、送付先等。続いて、装丁を細かく指定します。目次の有無、改ページ、本文の色指定(モノクロかカラーか)縦書き・横書き等々。

最後の最後まで悩んだのは表紙のデザインでした。デザインパターンは全部で12種類。申込みの前までは、全体が青い「blue cloth」にしようと思っていましたが、申込み中に、再度確認してみましたら、急に悩み始めました。うーん。悩んだ末に、緑と白の横縞模様の「スタイリッシュグリーン」に決定しました。緑色が好きなのも理由のひとつ。

結局、こんな感じで見積申込みとなりました。

++ココログ出版の仕様++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
表紙デザイン               :スタイリッシュグリーン
本文色                          :モノクロ
目次                           :付ける
文字組み/記事ごとに改ページ  :横組み/改ページあり
製本                           :無線綴じ(ヨコ137×タテ188mm)
------------------------------------------------------

決済の場面になって、ちょっと戸惑いました。見積をしてもらうのですが、その際、料金が210円かかります。その後、発注と言うことになれば、見積料は差し引かれるのですが、発注にいたらなかった場合は、210円はそのまま発生し決済されます。

決済には「iREGi」という@Niftyのサービスを利用するのですが、この間、登録したプリージーユーザーIDではできませんでした。仕方がないので、本家のメールアドレスの分の@Nifty IDを入力しました。まあ、どちらでも良いんですが、何となく腑に落ちません。ちゃんとした申込み方法があったのかもしれませんが。

あとは見積と確認用PDFファイルの到着を待つばかりです。

申込み後、3営業日以内に見積と確認用PDFが到着、確認作業に入ります。内容確認後、本の発注となり、その後、3~4週間で出来上がり、発送となります。どんな感じで出来上がるのか、今から楽しみです(つづく)。

と言うことで、私のブログ「夢のつづき It’s a wonderful world ~私的映画考~」が本になります。そこで、この本が欲しいと言う方は下記のメールアドレスまで郵便番号、住所、お名前をお知らせください。折り返し、送金先等をご連絡いたします。締切は2007年9月14日17時まで。本体は2700円前後の予定(確定次第お知らせします)。なお、発送時の送料はこちらで負担します(冊子小包予定)。

tobio2003@hotmail.com

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ココログ出版への道 Vol.3

このブログ「夢のつづき」は@Niftyのココログベーシックになっています。ココログのプランには、有料のベーシック・プラス・プロと無料のフリーがあります。昔から@Niftyの会員でしたから、ブログを始めるときには迷わずココログで登録しました。@Nifty IDに対してひとつのココログベーシックが無料で登録できます。追加でブログを作成する場合には有料になります。

そこで、ココログフリーという無料のブログを登録しました。フリーであれば、@Nifty会員でなくてもブログを作ることができます。ベーシックとは、若干、機能が違いますが、問題にならないくらいの違いなので、OKです。

さっそく、登録。プリージーIDを取得します。無料です。後々、ココログ出版を利用しますから、プリージーID取得時にクレジットカード情報も登録しておきました。登録が済めば、あとはブログの名前やアドレスを決めていくだけ。この辺は慣れたモノですから、さくさくと進みます。

タイトルはまったく同じ「夢のつづき」にして、アドレスは若干変えました。本にはブログのアドレスが表示されますので本来のアドレスとは違いますが、ここは致し方ない。

登録が終わったら、さっそく「読み込み(インポート)」をします。全件読み込み完了。あとは管理画面・記事一覧から、カテゴリーを指示して、50件ずつ削除していきます。削除しながら、懐かしい記事を見つけてはちょっと見入ったりして。

カテゴリー「私的映画考」のみを残した新しいブログの誕生です。

さて、いよいよ、「ココログ出版」の申込みです。(つづく)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ココログ出版への道 Vol.2

ここまで来て、あきらめるわけにはいかない。と思い、まずはメールにてココログに問い合わせです。

ひとつのカテゴリのみを選択して、作成はできますか?
できるのであれば、申込み方法を教えてください。

答えはこうでした。

残念ではございますが、現在のココログ出版書籍申し込み仕様においては、カテゴリーを選択しての申し込みはできません。
日付の範囲による指定のみです。

ただひとつご面倒をお掛けする方法ですがご案内致します。
書籍にされない記事群を、お申し込みの時のみ予め、"公開"設定ではなく、"下書き"設定としていただきますと、書籍申し込みされた記事は"公開"設定のみを認識しますので、
可能です。

な、なにー。800件からある記事を100件だけのこして全部非公開(下書き)状態に?!とんでもない手間です。1件ずつ記事を開いて、下書き状態にして保存。気が遠くなるような作業です。そこまでするかなあ。本にはしたいけど、そこまで手間をかけるかあ。

それに、申込みの期間、他の記事がまったく表示されなくなるわけで、そうなれば、いつも訪問してくださる皆様にもご迷惑をかけることにもなりかねない。うーん。

そこで、考え出した苦肉の策。

もう一つブログを立ち上げて、そこに「私的映画考」だけを記事にすれば良いんだ!ココログにはバックアップの方法として、「書き出し(エクスポート)」というモノがあります。それこそ全件のバックアップですから、800件あまりの記事がテキストファイルに保存されます。

で、もう一つ別のブログを作って、今度は「読み込み(インポート)」すれば良い!その上で、不要な記事は削除していけば良いはず。まとめて削除するのはそれほど手間は掛からないから、問い合わせの返答よりもこちらの方が良いかも。

と言うことで、ココログフリーにて新しくブログを作成してみました。(つづく)

| | コメント (0)

ココログ出版への道

このブログ「夢のつづき」を始めて、およそ2年半。様々な記事を書いてきました。記事の件数も800件を超えています。その中でも、初期の頃から書きためたカテゴリー「私的映画考」。今まで観てきた作品の中からオススメ作品を中心に書いてきました。私にとっては大切な記事です。

感動した作品、泣ける作品等々、今観てもらいたい作品の数々。まもなく100本目(Vol.100)になろうとしています。と言うことで、きりの良い100本貯まったところで、本にしてみようと思っています。思い立ったのはいつの頃だったか、50本目の頃には確実に考えていましたし、本当に初期の頃だったかもしれません。

@Niftyのココログには「ココログ出版」と言って、ブログを本にするサービスがあります。1冊から作ることができます。ソフトカバー(無線綴じ)やハードカバー(上製本)で製本でき、中面をカラーにすることもできます。1冊の単価は1480円~(ソフトカバー、モノクロ、80ページ)。自主出版というカタチにはなりますが、自分だけの本が出来上がるわけです。

ところが、です。現在のココログ出版の仕様では特定のカテゴリーのみを選択しての作成はできないのです。ガーン。ココログ出版の存在は知っていましたが、詳しい内容についてはあまり調べていませんでした。

現在のココログ出版の仕様では日付範囲の指定でしか、申込みができないのです。全部の記事、すべてのカテゴリを、と言うわけにはいけないから、断念か・・・。どうしよう・・・。(つづく)

| | コメント (0)

荻原浩「噂」

今日、ご紹介するのは、荻原浩の「 」です。書店で文庫本を眺めていて、なんか面白そうだなあと思って手に取って読んだ一冊。

「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。不特定多数の女子高生の噂話で始まります。映像にするなら顔を映さずにカメラが忙しく揺れるような画面。雑踏。暑い日差し。そんなイメージです。

香水の新ブランド・ミリエルを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生をスカウトし、口コミを利用して、噂を広めるのが広告代理店の狙いだった。噂は都市伝説化し、香水は大ヒット。しかし、噂は現実となり、足首のない少女の遺体が次々に発見された。

捜査に乗り出しのは目黒署と警視庁捜査一課。目黒署の刑事・小暮巡査部長が主人公として、物語を牽引します。元警視庁の刑事だった小暮は妻を亡くし、高校生の娘とふたり暮らし。そして、小暮の相棒として登場するのが、警視庁の名島刑事。30歳そこそこで警部補となった女刑事。年も階級も逆転したこの2人の捜査が始まります。

このコンビが絶妙です。捜査の本流とは違って、別の視点から真相に迫ります。2人目の被害者にストーカー行為をしていた美容師が捜査線上に浮かび上がりますが、何かが違う。名島の経験から来る女性らしい捜査をしていきます。

娘とあまり上手くいっていない小暮。渋谷にたむろする女子高生と接していく内に、今まで知らなかった世界を知ります。独特の嗜好、思考、言葉遣い等々。見るモノ聞くモノ何もかもが分からない。その結果、娘のことを少しずつ理解できるようになります。この辺はユーモラスに描かれています。

読み進める内に、冒頭、女子高生の噂に始まり、広告代理店での意図的に噂を広めたという説明へと続きますが、この構成は、なぜなんだろう、なぜこんなに早くばらすのだろうと思っていました。が、最後まで読んだ時に、これは、最後の一行のためであったのかと思えました。

伏線はいたるところに張りめぐらされ、最後の最後までどんでん返しが続く、そして、驚愕の事実。はっきりとは書かれていないために、後から徐々に怖さがやってきます。

昨今、どうして、本作のような猟奇的な殺人事件が起こるのだろうか。本作の中では「頭じゃなくて、心の問題だ。」と語っています。本来はあるべき越えてはいけない心の壁があるはずなのに、その壁が壊れつつあるんだと。それは、モラルだったり、感情だったり、動物的な本能だったり。

インターネットや電子メールをはじめとして情報が溢れかえっている現代。どの情報を選択するのか、どれが正しいのか、その中で生きるためには、しっかりとした心・モラルがなければいけないのでしょう。

本作は本格的なサスペンス・ミステリーですが、ミステリーだけではなく様々なジャンルの小説を書いている作者。これからも、続けて読んでみようと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

藤崎慎吾「螢女(ほたるめ)」

「螢女」藤崎慎吾・著 ソノラマ文庫

今日、ご紹介するのは藤崎慎吾の「螢女(ほたるめ)」です。前回、同じ著者の短編集「レフト・アローン」を読みまして、いたく感動してしまったので、今度は長編を読んでみました。

主人公・池澤亮は「ITマガジン」のライター。ひとり故郷の近くの森に入り、使われなくなったキャンプ場にいた。人気のない山中には廃屋となったキャンプ場の管理棟が残っていた。そして、森に響き渡る電話のベルの音。おそるおそるとった受話器から流れ出る声は、山を破壊して進められるリゾート開発工事の中止を池澤に訴えた。

調べる内に電話の声の主が一ヶ月前にその山で消息を絶った女性と知り、蛍女の伝説と幼い頃慕った少女の面影を彼女に重ね合わせた池澤は、友人の植物学者・南方と調査を開始するが・・・。

電気も通っていないし、もちろん電話線も繋がっていない施設にある電話機。なぜ、電話機からありえない声が語りかけるのか?浮かび上がってきたのは、人間の排除に動く「山の神」の恐るべき意志と、その手段だった。

現代の日本を舞台にしたSF小説です。首都圏郊外の森の中にリゾート開発と称して、自然の破壊とも言うべき開発が始まります。その開発を取り仕切るのは、もうひとりの主人公とも言うべき吉峰。潔癖性とも言える清潔好きで、病的な神経質。完全主義者なのでしょう。彼にも螢女となった女性・蛍子との因縁があります。

物語は池澤と吉峰の動向を通して展開します。池澤には幼い頃の後悔があります。幼なじみと言うよりも、幼いながらにも恋心を抱いていた澄子。澄子は不幸が重なり、家を追われ、行方しれずになっていたのです。もしかしたら、助けてあげられたかもしれない。それは、30年以上前の話、幼かった自分に何ができたのだろう。忘れていた過去の出来事。次第にその過去が明らかになっていきます。

螢女が登場するシーンは極めて幻想的で美しいです。静まりかえった森の中、無数の蛍が集まり、光の渦を描き、次第に密度を増し、青い陽炎のように立ち上り、女性の姿を形作りだします。そして、青い光の粒子でできた女性は、森を救ってくれと池澤に懇願するのです。この本を買ったのは昨年なのですが、読んだのはちょうど蛍の季節の今だったので、余計に臨場感がありました。むせかえるような森の中。蛍の群れ。木々のざわめき。光。そして闇。

幻想的なシーンがいくつもありますが、正反対に科学的にリアルな描写があるので、真実味が出てきます。植物や動物、森全体がひとつのネットワークを形成し、情報を共有・伝達していると言う下りは、興味深いです。現在のインターネットと同様の仕組みが森にはあるんだと。荒唐無稽のような気もしますが「人間はいつでも二番煎じ」なのかもしれません。

SFという設定ではありますが、描かれているのは人間のエゴや、自然に対する畏敬の念、自然を大切にするべきだという想いなのでしょう。21世紀の現在でも、科学では解明できない事はまだまだあるに違いありません。そして、守るべきモノは必ずあります。そんな想いに浸れる作品です。SF小説ではありますが、小難しい設定はあまりありませんので、誰でも気軽に読める作品になっていますので、SF小説が苦手な方もぜひどうぞ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

筒井康隆「七瀬ふたたび」

時々、無性にSF小説が読みたくなるときがあります。中学生のころ、SF小説をわりと読んでいました。そのなごりなのかもしれません。表題の「七瀬ふたたび」も中学時代に読んだような気がしますが、あまり覚えていません。

最近では、昔読んだ本や読みかけた本を、大人になって読み返すこともありますし、まったく読んだことのない小説を読むこともあります。

今回、読んだのは、「家族八景 」「七瀬ふたたび 」「エディプスの恋人 」という七瀬シリーズ三部作。

第1作「家族八景」。精神感応能力(テレパシー)を持つ七瀬。少女時代から、精神感能力を持っていた七瀬はそのことをひた隠しにしていました。高校を卒業してお手伝いとして働く七瀬。なるべく多くの人と接触をしないために、家庭に入り働くことのできる家政婦をしています。

そこで描かれるのは人間の業と欲。七瀬は精神感応能力を使って、相手の思っていることが分かりますから、お手伝いさんとしてはかなり有能です。言われる前に動く事ができますから、それは便利な能力です。しかし、怖いのは人間です。時には七瀬に危害が及ぶこともありますが、なにより怖いのは家人が思っていることです。一見仲の良い夫婦や家族ですが、心の中では恐ろしいことを考えているんですね。あー、怖い怖い。

そして、2作目の「七瀬ふたたび」。こちらでは、家政婦の仕事を辞めて、旅にでたところで、他の能力者たちと出会っていきます。透視能力、念動力、時間移動と様々な能力者たちが登場。しかし、謎の組織に命を狙われはじめ、ひとり、またひとりと命を落としていきます。

この2作目「七瀬ふたたび(1979年放送・全13回)」を子供の頃に、NHK少年ドラマシリーズで見たのです。確か夏休みだったと思うのですが、一日30分で週5回放送していたような気がします。断片的にしか覚えていないのですが、毎日ワクワクしながら見ていたのを覚えています。七瀬役を多岐川裕美が演じていたのがとても印象的で、今回、小説を読んでいく上でも、映像として多岐川裕美を思い浮かべて読んでいました。

第3作の「エディプスの恋人」。高校の教務課で働く七瀬。ある日、野球部の練習中、少年の上でボールが破裂するという事態に遭遇します。近くに超能力者がいるのでは?と思い、調べていく内にとんでもない事実に突き当たります。全知全能の神ともいえる存在”意志”を感じるのでした。

1作目では家庭、2作目では国・組織、3作目ではついに神ともいえる存在を描きます。日常に存在するSF的要素から次第にスケールアップして全宇宙までも取り込む内容になっています。

続けて三部作を一気に読んだので、ドンドンと面白さが増していきました。超能力は良いことに使えば良いのかもしれませんが、悪いことに使うこともカンタンな事。しかし、そんな事はどうでも良くなってしまうような精神の旅・宇宙の深淵へと旅にでる七瀬。彼女にとっての幸せな日々は訪れるのでしょうか。

サスペンスやミステリーも良いのですが、より想像力をめぐらせるSF小説も面白いモノです。これからも時々読んでみたいと思っています。

『七瀬ふたたび1・2・3(DVD)』

| | コメント (0) | トラックバック (0)

伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」

今日、ご紹介するのは伊坂幸太郎の「オーデュボンの祈り」です。「ラッシュライフ」「重力ピエロ」と読んで、すっかり伊坂作品の魅力に惚れてしまいました。3冊目に読んだ「オーデュボンの祈り」で、さらに惚れ直しました。本作が伊坂幸太郎のデビュー作。

主人公の伊藤は仙台の先の牡鹿半島の沖にある荻島にいた。なぜ居たかと言えば、気付いたらそこにいたのだ。ある意味、現実逃避。仙台には居られずに逃げてきたのだ。その島は奇妙な島だった。150年ほど前から外の交流を絶っていたのだ。

島に住む人々がまた奇妙だった。嘘しか言わない画家、詩集を読み銃を持つ男、地面に耳を付けて音を聞くのが好きな女の子、身動きの取れないほど太りすぎた市場の女、等々。でも、一番奇妙なのは田んぼの真ん中に立つカカシ。そのカカシはしゃべるどころか、未来を知ることができるのだという。そのカカシは優午と言った。

日常から逸脱するなら、どうせ現実逃避するなら、こんな島に行くのも良いかもしれない。確かに、実社会とは少しずつ食い違っていることも多く、最初は戸惑うことが多いかもしれない。でも、そこは暖かく、優しく、そして、ゆったりとした時間が流れているように思えます。

しかし、本書の魅力はミステリーとしての醍醐味が存分に味わえること。物語の序盤で未来が予測できるはずのカカシの優午が殺されてしまうのです。擬人化されたというより、1人の人間としてのカカシが殺されるのだ。未来が見えていたのにもかかわらず。なぜ?

伊藤と共に物語を進めていくのは日比野。案内をかってでた日比野は伊藤を連れて島を歩きます。そこで、出会う人々。日比野自身も過去を背負って生きていますが、島の住民たちも当然、過去やトラウマを背負って生きています。そして、皆、それぞれがカカシの優午との関わり合いを持っていました。

島に昔から言い伝えられていた言葉。「この島は何かが欠けている。それを誰かが置いていく」と言うモノだ。いったい何が欠けているというのだ。何もないようで、何もかもあるようで、満たされているようにも思えるのに。この疑問は、常に頭の隅にあります。

そして、リョコウバト。オーデュボンは実在した人物。億単位で飛んでいたリョコウバトを見つけた人物。その動物学者の祈りは届かなかった。リョコウバトは次々と狩りの獲物となった。そして、絶滅。なぜ?亡くなった後も、祈りは続いた。この島でも。

伊藤の出会った人々、経験したこと、過去。それが、ひとつに繋がるとき。神様のレシピが見えてきて、そして、感動的なラストへと続きます。「あの丘に行こう」。現実から離れたとき、見えてくるモノがあるのです。それは、素敵なこと、素敵な世界、素敵な時間に違いありません。人間、まだまだ捨てたモンじゃない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

東野圭吾「浪花少年探偵団」

今日、ご紹介するのは東野圭吾の「浪花少年探偵団」です。

主人公・竹内しのぶ。25歳、独身、短大卒。大阪大路小学校6年5組担任の教師。ちょっと見は丸顔の美人だが、口も早いし手も早い。情には熱いが、気が短く、思いこんだらまっしぐら、走りだしたら止まらない。台詞はすべて大阪弁。まるで、「じゃりン子チエ」がそのまま大人になった姿のようです。

しのぶセンセのクラスの福島の父親が殺された事件を皮切りに、事件解決のためにしのぶセンセと教え子の悪ガキ探偵団が大活躍します。

連作短編集としていくつもの事件に係わっていきます。事件の内容ももちろん面白いのですが、実は、エリートの本間と刑事の新藤がしのぶをめぐって恋のさや当てを繰り広げる。こちらの展開にも興味津々。三人の関係はどうなっていくのか。近づいたり離れたり。上手くいっているかのように見えても、しのぶセンセは気のない様子。おまけに新藤刑事は、事件が発生すれば、デートの最中でも呼び出されてばかり。

センセが事件に係わっていくときも、その場にいて巻き込まれることあり、無理矢理首を突っ込むことあり、教え子関係だったりもありと様々。警察の捜査とは違うひらめきで、事件解決の糸口を掴んでいきます。ただ、それをしのぶセンセ自身が自分で解決しようとするのは玉に瑕。警察に任せればいいモノを。

本作は、悪ガキ探偵団の卒業と共に、しのぶセンセが大学へと内地留学する所で終わります。で、続編「しのぶセンセにサヨナラ―浪花少年探偵団・独立編」に続きます。学校を離れたことで、これまで以上に色々な事件に係わっていきます。もちろん、ますます元気にますます熱いしのぶセンセのパワフルな活躍が味わえます。

おもしろ楽しく、時にホロリという感じで読んできましたが、最も感動したのは最終話「しのぶセンセの復活」のラストシーン。このシーンのためにこのシリーズはあったんではないかなあとも思える良いシーンになっています。教育とは何なのか、そんな思いを抱きつつ、「しのぶセンセ」シリーズは幕を閉じます。

東野圭吾のシリアスで複雑な長編ミステリも面白いですが、人情味溢れるユーモラスな短編ミステリも興味深いです。できれば、「しのぶセンセ」の続編もまだまだ読みたい気もします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

大林宣彦「ぼくの青春映画物語」

ぼくの青春映画物語 集英社新書

今日は、大林宣彦著「ぼくの青春映画物語-穏やかな一日を創造するために」をご紹介します。

ここ数ヶ月、大林宣彦監督作品をDVDで何本も観ています。映画は映画でとても良いのですが、大林監督の著書もなかなか興味深いです。本書は大林監督の映画に対する想いや、映画作りに対するこだわりが書かれている前半と、生い立ちから映画との出会い、目覚め、上京、そして映画制作へという半生記の後半に分かれています。

「スターウォーズ(エピソード4)」はなぜ成功したのか、そして「エピソード1」はなぜ冷たく感じるのか?に始まって、日本映画界の重鎮・黒澤明監督や映画解説でおなじみの淀川長治氏とエピソードを交えて、映画とはどうあるべきか?著者なりの熱い想いが書かれています。

中でも印象的なのは、黒澤監督がおっしゃったという言葉「賢い、誇るべき知性を持った人間が、幸福を願っているのに、何だかいつも不幸な方向へと自ら不幸を作りながら進んでいく」。人間の愚かさを語っているのでしょうが、それが映画の世界にもあると言っているのでしょう。

映画作りの下りは秀逸です。少女の成長を描く作品が多い大林組だからこそ、特殊なのかもしれませんが、俳優たちは撮影の予定がなくてもロケ地に暮らし、家族として生活します。そして、少女たちは人間としての美しさや賢さを学ぶのです。「ふたり」の撮影風景を交えて書いてあります。あるモノをあるべき姿で、ありのままを撮る。そんな撮影方法なんですね。

「OK」を出すと言うことはどれだけの責任と覚悟を持って出すのか。それは監督にとっても覚悟のいることで、基準はあってしかるべき。様々な想いを持って映画作りにあたっているんですね。人生には「テスト」はない。だからいつも「本番」なんですね。

後半の半生記はこれまた興味深いです。当然、尾道での少年時代の話しから始まります。どのような家庭で育ち、どのようにして映画と係わってきたのかを垣間見ることができます。大林作品も数多く登場しますので、観てから読むとなお面白さが増します。特に尾道三部作の番外編「マヌケ先生」がオススメです。

高度経済成長期に失われてしまったモノ。それは人間の賢さ、美しさ。でも、それは後世に語り継がなければならない。古き良き時代の先人の知恵を明日へ繋ぐために何をしたらいいのか、何をしなければならないのか、そんな想いを味わえます。そして、何よりも、映画作りに対する熱い想いが行間から伝わってきます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

梨木香歩「からくりからくさ」

今日は、以前書いた「西の魔女が死んだ」に続いて読んだ梨木香歩作「からくりからくさ」をご紹介します。

蓉子の祖母が遺した古い家で女四人の共同生活がはじまります。糸を染める蓉子、機を織る与希子と紀久、鍼灸師を目指すマーガレット。静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々、やさしく硬質な結界、その家にはゆっくりとした日常があったのです。しかし、葛藤や嫉妬ややるせない気持ちが沸き立ち始めることもあります。

そして、心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にした、四人とりかさんの生活を描きます。生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語です。

「次はりかさんだ」と言う蓉子の台詞にエッとなった。祖母が亡くなったあとの家。喪に服すると言って眠ったりかさんを起こすのだという。何度読み返してもりかさんは人形だ。人形に関して世の中には三つのタイプがいて、もの凄く人形に惹かれて人形を家族のように受け入れる人、嫌ってまったく寄せ付けない人、まったく関心がない人。私も最初はどうでも良いように思っていましたが、読み進める内に受け入れても良いような気持ちになってきました。

網戸もなく、エアコンなんかもちろんない家。ヤブ蚊を防ぐために庭に生い茂る草は取り除こうと言うことになりますが、もったいないので食べてしまおう。草花や木の名前が分からないのがとっても惜しい。わたせせいぞうの「」の家のよう。植物の名前からイメージができて、分かったのなら、なお良いのでしょう。昔ながらの心豊かな生活とも言えるでしょう。

半襟、紬、縮、媒染等々、これまた分からない着物・染色の世界。分からないなりにも想像力を駆使したり、調べたり、人に聞いたりして、何とかイメージを広げました。

四人は不思議な縁によって、導かれ、この家に住むようになりました。「宿世の縁(すくせのえん)」と言う言葉で表現されています。「宿世」を辞書で引くと「前世」のことらしい。縁もゆかりもなかったはずの四人だったのに、その家での共同生活をしていく内に、血縁関係や様々な繋がりが明らかになっていきます。

そして、りかさんの謎。どんな経緯で主人公・蓉子の手元にやってきたのか?そこにも宿世の縁がありました。赤光・澄月の謎、唐草模様の意味等々不可思議なモノが蔦のようにからみつつ、物語は謎解きの要素も含んで展開していきます。この辺りが、ミステリが好きな私にとっては、別の意味でおもしろみがありました。日常にある不思議な繋がり。実はそこには縁があったりして。自分にも家系図があったら面白いだろうなとか、調べてみたら面白いだろうなと思います。

「西の魔女が死んだ」の時のように祖母から孫娘へと受け継がれるモノが描かれています。それを自然と活かす蓉子。憧れるマーガレット。家族の暖かさ。人間があるがままの生活を送ること。その中にある素晴らしさ。そしてそれを後生へ受け継いでいくこと。そんな、生活も素敵なんだと思わせてくれます。

感動的で良いシーンだなと思ったのは、失意の与希子が、森で見る蚕の孵化。子供の頃のトラウマで、蛾に対してあんなにも嫌悪していたのに、その誕生の時、与希子の中で何かが変わった。幻想的で、神秘的で、そして何より感動的。伝えることの意味、生まれてきた意味、崇高な想いに浸ります。

そして、クライマックス。三人展を開催すべく、共同で作品を作る蓉子、与希子、紀久。すべてが、この場面に集約されていきます。まるでドラマの、映画のラストシーンのように。その場面に対する登場人物たちの想い、充足感、悲しみ、怒りがあらわになります。が場面は音もなく終わろうとします。

ラストシーンまで不思議な感覚が漂いますが、少し怖くもありますが、でも感動的でもあります。運命というのはきっとあるし、出逢うべき人はきっといる。そして、人間の身体はお旅所であるから、その時をどう過ごすか?どう生きるか?そして、何を伝えるか?そこが重要なのかもしれないと思わせてくれます。「西の魔女が死んだ」とは違った意味の感動を覚えました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

私的読書考2006

今年を振り返るシリーズ。今日は読書です。

今年2006年に読んだ本は27冊でした。全部が文庫本。新書を読むこともあるのですが、今年は一冊も読みませんでした。2002年に54冊読んだ以降は年々減ってきていて、2003年以降は30冊前後が続いています。

プロフィールや懸賞なんかのアンケート等で趣味の欄に”読書”と書く場合がありますが、こんな冊数では書けないかもしれません。まあ、趣味というのは程度を言うのではなく、好きか嫌いかを言うのでしょうから、良いんでしょうけどね。

27冊の作者別内訳で多いのは、東野圭吾と中谷彰宏。共に8冊ずつでした。東野圭吾では「変身」「分身」「秘密」「手紙」他を読みました。「秘密」は事故によって母が亡くなり、その精神だけが娘に移ってしまうと言うお話しで、そのこと自体が世間に対する秘密なのかと思っていましたが、どうにも違うらしい。最後の数行でそのことに気づくのですが、真実は分からないと言う終わり方が、良かったです。

今年から読み始めた作品で良かったのは、伊坂幸太郎。「ラッシュライフ」と「重力ピエロ」を読みました。2作品に共通して出てくる黒澤という泥棒がなかなか良い味を出しています。復業で探偵をやっているんですが、立ち居振る舞いが格好良く、紳士的。一言の台詞も重みがあります。物語も興味深く「重力ピエロ」では、遺伝子にまつわる兄弟の葛藤を描いています。兄弟とは、血縁とはといったい何なんだろうという思いに駆られました。これからも伊坂作品は読んでいこうと思っています。

読書は自分では考えつかないこと、体験できないようなことを見せてくれ、そして、テーマについて考えさせてくれます。映像作品もそれはそれで良いのですが、読書はより想像力をかき立ててくれます。来年も多くは読めないでしょうが、無理のない程度にいろんな本を読みたいと思っています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

東野圭吾「さいえんす?」

今日は東野圭吾の「さいえんす?」をご紹介します。

東野圭吾のミステリー作品を何冊か読みましたが、エッセイも興味深い内容で面白いです。エッセイとしては、「あの頃ぼくらはアホでした」につづいて2作目。「あの頃・・・」は小学校から大学までの怒濤の学生時代をパワフルに描くモノでした。趣味というかこだわりについてのお話しはマニアックな内容でした。(^_^;)

本作「さいえんす?」は科学ネタを中心に著者なりの考え方が書かれています。科学技術の進歩はミステリー作品にどう影響を与えたのか?数学は何のためにやるのか?

その他、2004~2005年に起こった時事問題に対しての感想、想いが書かれています。野球やスキー等のスポーツや中越地震、JR西日本の福知山線脱線事故を通しての危機管理や企業のマニュアルについて等々。男女の恋愛問題からダイエットブームへの提言なんかもあり、作者の人となりを垣間見ることができます。

なかでも理系と文系の話しは興味深かったです。著者は理系の出身で、確かに作中にも科学技術に精通している作者らしい内容が多々あります。「探偵ガリレオ」シリーズはその最たるモノでしょう。科学ネタをトリックとしたミステリー作品でした。

「難問に出会い、自分で考え抜いて解けたときの喜び、それがたまらない」と言う文章がありますが、私もこの感覚は分かります。仕事上でもそうですが、ルーティンワークが苦手で、何かしらを考え出したり、答えを導いたりするような仕事の方が好きです。

数学にしても科学にしても、道具には違いありません。考え方や方向性を示すモノであり、それは万能ではないはずです。良いことに使うのも、悪いことに使うのも、使う人によって変わってきます。どんなに文明が進んで便利な世界になったとしても、使い方一つで人の命を奪うことや犯罪を犯すことになっては、元も子もありません。精神的にも進歩することが今の私たちに必要なことなのでしょう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

藤崎慎吾「レフト・アローン」

レフト・アローン

最近でこそあまり読まなくなりましたが、子供の頃からSF小説が好きで良く読んでいました。中学生の頃が一番読んでいたでしょうか。

ショートショートの星新一、「日本沈没」の小松左京、「妖星伝」の半村良、「七瀬ふたたび」の筒井康隆、等々。海外作品も「ローダンシリーズ」「キュプテンフューチャーシリーズ」なんかも読みましたし、機動戦士ガンダムのモビルスーツの元になったと言われているパワードスーツが登場するロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士」、同じくハインラインの「夏への扉」はかなり好きでした。

で、最近本格的SF小説を読んでいなかったのもありましたし、新聞に紹介されていたのを見て手に取ってみた作品が、今回ご紹介する藤崎慎吾の「レフト・アローン」です。

本作はSF短編集で、5作が収録されています。1作目は表題作「レフト・アローン」。バリバリのハードSF。しかしながら、広い宇宙でも孤独ではない。という雰囲気に溢れています。

2作目は「猫の天使」。宗教集団が教会に立てこもると言う事件が発生。主人公の学者が猫の目を通して、教会の中を探ると言う話し。猫だけが見える世界と言う、目の付け所が面白い作品。ラストシーンが秀逸。

3作目は「星に願いを ピノキオ2076」。コンピュータが赤ちゃんの脳を乗っ取ろうとする話し。コンピュータにも愛を感じることが出来るのでしょうか。人間になりたがったコンピュータ。高度に情報化された社会の悲劇とも言えるでしょう。

4作目は「コスモノーティス」。進化した人類コスモノーティス。宇宙へ進出するなら、宇宙に住める人類を作ればいいと言うことで様々な種類に遺伝子操作された人類。主人公のロッコはある日、遠い宇宙のどこかからの声を聞く。その声のはいったい・・・。

5作目は「星窪」。これが良かった。160年前の出来事を通して、宇宙の神秘に迫る。感動的なお話しでした。常識や科学では計り知れない出来事がある。そんな神秘的で、ファンタジックなお話し。手紙のやりとりで進行するのも面白い。

と言うバラエティに富んだSF短編集です。どの作品もテーマが心に響きます。火星移民が始まった時代を描くハードSFも良いですが、近未来を描く作品も良かったです。奇想天外なんですが、リアルな描写、ちょっと難しめの設定がSF好きの心をくすぐります。

21世紀になって早6年。子供の頃に描いた、車が空を飛び、ぴちぴちの服を着て、壁面から食事が出る、そんな未来はしばらく来そうにありません。21世紀になってもそんなに変わったような気はしませんが、でも少しずつですが科学は進歩しているのでしょう。いったい科学はどこまで進歩していくのでしょうか。便利な世の中が来るのは良いのですが、科学を使うのはあくまでも人間。その人間も進歩していかなければ、幸せな世の中は来ないかもしれません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

伊坂幸太郎「ラッシュライフ」

ラッシュライフ

今回ご紹介するのは伊坂幸太郎の「ラッシュライフ」です。書店で、本を物色していて面白そうだなあと思って読んでみた作品でした。

主人公が沢山いる群像劇で、大きく5人の主人公がいます。それぞれの物語は何の関連性もないように進んでいきますが、いつしか接点が見えてきます。最初は映画「クラッシュ」のように時系列が同時進行する群像劇なのだろうと思っていましたが、どうやらそうではありません。時間軸はバラバラのようです。そこがまたおもしろい。

泥棒の青年、無職の中年男、宗教へのめり込む若者、不倫相手の妻を殺そうと企む女、画廊の主人。それぞれの人生があり、交わることのないように思えますが、少しずつ関わり合い、繋がっていきます。「ああ、ここに繋がるのか」と見えてくると、パズルのピースが一つ一つはまっていくかのような感動があります。

どこかで選択をまちがい、そのことによって良い方に転ぶこともあれば、悪い方に転ぶこともある。それが、誰かに影響を与えているなんてことは思いもしない。どん底まで落ちていく人生にも、きっと何かのキッカケで光明が差してくることもあるのでしょう。

人生とはいったい何なのか、何が人生によって良いことなのか、それは分からない。人生はリレーのように誰かに受け継がれ、永遠に続く。だからこそ、強く、前を向いて、明日を生きなければいけない。そんな気分に浸れる作品でした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「分身」東野圭吾

分身

2003年11月に初めて読んだ東野圭吾作品は「探偵ガリレオ」「予知夢」。その後、デビュー作の「放課後」に始まって「卒業」「学生街の殺人」と学園ミステリーを読みました。それから「宿命」「変身」と今までとは違う作風の作品を読み、より東野作品に惚れ込みました。

それから何作か読んだ後、今回読んだ「分身」でさらに感動。

「もしかしたら私は母に嫌われているんじゃないか」と言う書き出しで始まる本作。主人公の一人、鞠子の一人称で綴られる「鞠子の章 その1」。次はもう一人の主人公の一人称「双葉の章 その1」。交互に二人の主人公を追う形でストーリーは展開します。

二人はそれぞれの母親を不慮の事故で失っていますが、そこから二人は自分の出生の秘密を求めて歩き出します。二人の悩みは容姿がまったく親に似ていないこと。後に二人は双子のようにそっくりなことが分かりますが、同じ目的で行動しているにもかかわらず、二人は出逢うことはありません。

どんな場所で、どんなタイミングで二人は出逢うのか?物語が進むにつれ、すれ違いそうになるともうドキドキです。二人の出生の秘密は現代医学の危険な領域にかかわっていきます。

親子とはいったい何なのでしょう?血縁とは?医学の進むべき道とは?様々な疑問を投げかけ、舞台は東京、札幌、函館、旭川、そして富良野と展開。謎解きとしても楽しめるのですが、父と子、母と子、それぞれの苦悩を描き、愛をも描きます。そして物語は大団円へと向かいます。

ラストシーンは「宿命」「変身」の時にも感じたようなさわやかな感動を与えてくれます。また、情景を思い浮かべやすく、映像も自然に浮かんできます。

作風が次々と変わっていき、ミステリーから様々なカタチのサスペンスへと広がっていく東野作品。力量と言ってしまうのはカンタンでしょうが、それだけではない、可能性があるように思えます。まだ読んでいない作品が多いですから、これからどんな世界観、どんな物語、どんな登場人物に会えるのか楽しみです。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

大林宣彦「小説 なごり雪」

なごり雪「なごり雪」 著者:大林宣彦 出版社:メディアファクトリー

先日、私的映画考Vol.40でご紹介した大林宣彦監督作品「なごり雪」には、小説版があります。この本を私が買ったのは映画館で観た直後の2002年11月。これまた、DVD同様、買ったは良いけど読んでいませんでした。2006年6月にDVDを観終わってから、読み始めました。

小説といっても、いわゆる原作本ではなく小説仕立てのエッセイと言う感じです。映画「なごり雪」には原作小説はありませんので、映画オリジナルの作品になります。なので、シナリオを小説風に綴ってある訳です。

全編のシナリオと、その合間にこの日の撮影ではこんなことがあったとか、世界ではこんな事件があったとかの裏話、シーンの意味合い等が書いてあります。映画本編の時間軸を基準として、映画作りにまつわる出来事も含めて綴られた小説であり、メイキング本でもあります。

なんですが、この本が実に良い。映画作りに対する熱い想いが行間から伝わってきます。映画本編を観ているだけでは知り得ない、シーン・カットに込められた意味、監督と大分県との関わり合い、9.11事件に想う映画考、町守り、待ち守り、古里・尾道等々。

映画本編を見終わってから小説版を読むと、より一層、感動が増します。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

梨木香歩「西の魔女が死んだ」

西の魔女が死んだ

以前に読んで良かった本をご紹介。梨木香歩の「西の魔女が死んだ(新潮文庫)」です。夏になると各出版社で文庫本のフェアがありまして、その小冊子が店頭で無料配布されています。その小冊子を見て、気になって読んだのがこの本でした。

主人公の少女・まいは不登校になってしまいます。初夏の頃、通称「西の魔女」のおばあちゃんの家で過ごすことになりました。そして、大好きなおばあちゃんから魔女の手ほどきを受けることになります。魔女の手ほどきというのは、普段の生活で当たり前のようにしていることばかりなのですが、その中でも肝心なのは「何でも自分で決める」事なのです。

家や学校での生活では、決められたことを実行することばかりですが、自らの意志で決めて良い事ってあんまりないのかもしれません。あれをしちゃダメ、これをしちゃダメ、それは沢山あります。でも、ダメという規則は本当は良くない。でも、そんな生活ばかりだったので、まいはいざ自分できめる時は躊躇してしまいます。それが、だんだんと楽しくなってくる過程なんかはとてもほほえましい。教育ってこうでなければ。

おばあちゃんと暮らす間、色々な経験をしてまいは変わっていきます。そんな中でも物語の中心となるのが「死」です。まいはおばあちゃんに「人間は死んだらどうなるの?」と聞きます。おばあちゃんは優しく死後の世界や魂についての話しをします。魂は成長していくんだと。

ラストシーンで感動して思わず涙が溢れてきそうになりました。愛に溢れたおばあちゃんの想い。そこには確かに生きた証があったし、魂は存在したんだと。

読んでいる最中に、映像が浮かんでくる小説は素晴らしい作品だと思えます。この作品は子供が読んだらそれなりに楽しめるし、大人が読んでも大人なりの楽しみ方があるはずです。大人もみんな子供だったんですからね。人間が人間らしく生きる、そんな自然のあり方、生きること、様々なテーマが込められた素敵な作品です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「変身」鑑賞

先日、映画館で「変身」を見てきました。東野圭吾原作のサスペンス。小説を読んだあとだったので、映像化された作品は新鮮でした。

ある事故が原因で、脳の部分移植をされた主人公。退院後、主人公は自分が少しずつ変わっていることに気付きます。そして、そこには悲劇が待っていました。別の人間へと変身していく主人公の狂気と愛憎を描いた作品。

原作の小説では数人の日記・メモがポイントで出てきますが、映画ではそれがありません。また、小説はモノローグが多いですが、映画では極力モノローグは排除され、心理描写は表情や音楽が表現しています。音楽が美しいなあと思っていたら、音楽の担当は崎谷健次郎。「もう一度夜をとめて」でデビューした崎谷氏。デビュー当時から好きだったので、嬉しい驚きでした。

ラスト近くの病院のシーンで、ちょっとウルッと来てしまいました。台詞も良かったし、音楽も最高に盛り上がり良かったです。SFっぽいサスペンスが本筋ではありますが、ラブストーリーとしての面を強調した感のある映画も良かったです。

原作モノは読んでから観るか、観てから読むかをいつも思ってしまいますが、好きな作家の作品は先に読む方が良いように思いました。イメージが壊れるのを恐れるより、別の作品として受け止められるようにすればいい訳ですからね。

1/12からTBS系で東野圭吾原作のドラマ「白夜行」がスタートします。こちらはまだ原作を読んでいないので、先にドラマを見ることになるかもしれません。

変身 白夜行

| | コメント (4) | トラックバック (3)

中谷彰宏「3分で右脳が目覚めた。」

3分で右脳(うのう)が目覚めた。

私が愛読している本に、中谷彰宏氏の本があります。読み始めたのが1998年。かれこれ7年も読み続けています。読んだ本も100冊を超えました。今日は最近読み終わった本「3分で右脳が目覚めた。(知的生き方文庫・三笠書房)」をご紹介。

私は常々、自分でも右脳型人間だなあとは思っていましたが、この本を読んであらためて実感しました。「あ、これもそうだ」「これは違うな」と言う項目が多々ありました。

面白かった項目を列挙してみました。

右脳は順番にこだわらない
右脳は立体でとらえる
右脳人の話しは短い
「ほめる」のは右脳
ポジティブに働くのは右脳
好き嫌いで決めるのが右脳
省略部分を楽しめる右脳型人間
右脳は恥ずかしがらない
左脳型の人の口癖は「難しい」、右脳型は「面白そう」

「順番」というのは年齢とか、仕事の順番とか。年功序列の社会も能力主義、成果主義に変わりつつありますが、確かに仕事が出来るできないと言うのは年齢とは関係ないモノでしょう。

「立体でとらえる」というのは、立体パズルを解く時にもイメージが立面で湧いてきますし、物事の考え方も立体的、多面的に考えることは必要だなあと思うし、いつも意識して行動はしています。

左脳型の人は「話しが長い」と言います。細かななりゆきや状況を全部はなさないと気が済まなくて、省略が出来ないらしいです。話しは簡潔に短く、それでいて面白いのが好きですね。

「ほめる」のは大好きだし、根っからの前向きだし、「恥ずかしい」というのはあまり感じず、何でも楽しもうとしています。

一番実感したのは最後の、何事も「面白そう」って思うこと。同僚はなんに対しても「難しいー」とか言って、何事も始めるのが後れがち。私の場合は、始める前に「面白そう」と思うし、何より「難しそうで面白そう」くらい思っています。始めてやる仕事は確かに不安が沢山あるし、頭を悩ますことも多いでしょう。でもそれが楽しいんですね。もちろん、人ぞれぞれ、考え方や、向き不向きがありますから、いろんなアプローチの仕方はあって良いとは思います。

思い当たるフシや気になるフレーズが一つでもあったら、読んでみてはいかがでしょう。新しい気付きがあるかもしれません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

私的読書考

読書は趣味と言うよりは、私の場合、暇つぶし的感覚です。文庫本を持ち歩いているので、ちょっとした空き時間にちょこちょこっと読む事が多いです。映画館の待ち時間に読んだり、旅行の移動中に読んだり、プリウスくんでの通勤時、渋滞するので読んだりなんかです。

読み終わった本はマイツールでデータを入力しておきます。いつどんな本を読んだのか分かります。先ほどデータを集計してみましたが平均すると月に2,3冊。年間で30冊程度です。今年は今のところ20冊。

どちらかというとお気に入りの作家の作品を好んで読みます。良く読む作家は、阿刀田高、中谷彰宏、村上春樹、東野圭吾、ディーン・クーンツ。ミステリーが多いですね。他にも書店をぶらついていて、気になるタイトルの本があると手に取ってみて、パラパラとめくって気に入ったら、あとで購入する事があります。タイトルって重要ですよね。人それぞれ感性がありますから、何が良いかって言われても答えづらいですが、何かしらピピッと来るモノがあるんですね。その際、タイトルというのは私の場合かなり重要な位置づけです。

で、私は雑誌以外のほとんどの本をネットで購入しています。今は「楽天ブックス」を利用しています。お気に入りの作家の新刊が出るとメールで教えてくれるサービスもありますし、当然、キーワードで検索もできます。以前は、書店に売ってない本があると、探し歩いたりしていました。探してもない場合、書店で取り寄せをしてもらいましたが、2,3週間なんてざらでした。ですが、ネットで探せばたいていの本はどこかのサイトにありますから、すぐに手元に来ます。

先ほどのように、書店で気になった本があったらタイトルを覚えておいて、あとで検索して、買い物かごに入れておき、あとでまとめて購入する事ができます。1500円以上まとまれば送料が無料(楽天ブックス)になりますので、まとめ買いがお得です。おまけに楽天スーパーポイントが付きますので、ポイントが貯まったら、他の買い物にも使えます。残念ながら、いまのところ楽天ブックスでは貯まったポイントの使用はできません。

私の場合、すぐ読みたいと言うような事がありませんので、いつか読むとして買っておけばいつでも読めます。と言うような本が10数冊積んであります。こう言うのを「積ん読(ツンドク)」と言うらしいです。

ナポレオン狂 なぜあの人は「困った人」とつきあえるのか 海辺のカフカ(上巻) 変身 デモン・シード完全版

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「宿命」東野圭吾

宿命

そんなに多くは読まないが、月に2,3冊のペースで読書をしている。どちらかと言えば暇つぶしと言った感じだ。映画館での待ち時間、銀行での待ち時間、電車等の移動時間なんかに、何もしないでいることが出来ないので、いつも文庫本を持ち歩いて、時間のある時に細切れで本を読む。長編の場合、話しがとびとびになりがちなので、若干戻ったりして読むこともある。読んでいると、だんだん思い出すので、大筋は分かる。

映画は監督で見るが、読書も作家で読む。お気に入りの作家の本を読み続ける感じである。収集癖があるので、端から端まで読まないと気が済まない。現在のお気に入りは東野圭吾。「秘密」や「ゲーム」など映画化された作品もいくつかあるが、読み始めたキッカケは映画ではない。新聞の広告で文庫本の発売に載っていたものがふと目がとまり、気になったので買ってみた。それが面白くてはまってしまった。最初に読んだのは「探偵ガリレオ(文春文庫)」。新聞広告にはシリーズ2作目の「予知夢(文春文庫)」が載っていたのだが、調べてみると1作目があったので、そちらから読んでみた訳である。ミステリーはミステリーなのだが、トリックが科学的で興味を惹いた。主人公も大学の助教授と刑事という組み合わせ。一風変わった作品であった。

それから数冊読んでみたが面白い作品が多かった。今日読み終わった本が「宿命(講談社文庫)」。最近、WOWOWで放映された事もあり、映像化されたものを先に見るか、原作を先に見るかと言われれば、原作を先に見た方がイメージが固定されないので好みである。活字は自分の創作能力によって個人差があるが、映画などの映像は個人差が少ないと思っている。その分、イメージを固定されやすいであろうとも思う。

で、この本が良かった。最初に読んだ「探偵ガリレオ」シリーズも面白かったが、「宿命」はそれを上回るくらいの良さであった。巻末の解説によれば、筆者は「最後の1行を最初に考えた」そうだ。確かにラストの数ページが凄く良かった。どんでん返しと言うヤツである。ミステリーは殺人トリックが売り的なところがあるが、それ以外でもトリック・謎を持ちたい、違った味の作品を創作したいと言う筆者の意図がとても良く伝わった。

色んな顔を持つ作品を書くことは筆者の世界観を広げるという意味ではとても有意義なことだと思う。確かに似たような作品ばかりでは読者も飽きてしまうし、書き手も飽きてしまうのかもしれない。東野作品はまだまだ読み始めたばかりなので、これからもアッと驚くような作品に出会えることを期待している。

| | コメント (0) | トラックバック (0)