カテゴリー「私的映画考」の記事

2015/04/08

「はじまりのうた」私的映画考Vol.301

先日、「はじまりのうた」を観てきました。ジョン・カーニー監督作品。出演:キーラ・ナイトレイ、マーク・ラファロ、アダム・レビーン、ジェームズ・コーデン、ヘイリー・スタインフェルド 、モス・デフ、キャサリン・キーナー、エド・レニンガー他。 

シンガーソングライターのグレタ(キーラ・ナイトレイ)は、同じミュージシャンの恋人デイブ(アダム・レヴィーン)に裏切られ、失意のままライブハウスで歌っていた。そこに偶然居合わせた落ちこぼれの音楽プロデューサー、ダン(マーク・ラファロ)はグレタの才能に惚れ、彼女にデビューの話を持ちかける。その録音はニューヨークの街角で行うというものだったが、この無謀な企画が小さな奇跡を起こし始めるのだった。

冒頭は登場人物が出会うまでを、それぞれの目線で追いかけるという繰り返しの映像。グレタは、恋人と別れ失意のどん底。友人のミュージシャン、スティーヴ(ジェームズ・コーデン)に誘われるままライブハウスで歌います。そこへ偶然、どん底のプロデューサー、ダンが居合わせ、物語は動き始めます。

金はないけれどコネはあるダンは、スタジオを借りずにニューヨークの街角で録音しようとします。ここが良かった。コネでミュージシャンを集め、偶然出会った人々を巻き込みながら、次々に録音していきます。セントラルパークやチャイナタウン、橋の下、路地裏、ビルの屋上、地下鉄のホームなど、無許可もありますからまさにゲリラレコーディング。それがまた、グレタの作り、奏でる歌に合うのです。

グレタは、ダンの私生活にも関わっていきます。別居中の彼は問題山積。昼間から酒を飲み、レコード会社に行ってはくだを巻く。娘には嫌われっぱなし。しかし、グレタの歌はその関係さえも浄化していくようでした。

物語終盤にはダンの娘、バイオレット(ヘイリー・スタインフェルド)もレコーディングに参加。ここが実に感動的。何事にも自信がもてなかったバイオレットでしたが、名演を見せてくれるのでした。ここにはダンも演奏に参加していて、シチュエーションも加味して、さらに素晴らしかった。

やがてアルバムが完成したその日、誰も予想できなかった最高のはじまりが待っているのでした。やっぱり音楽って素晴らしい。色々な可能性を見せてくれました。

音楽がつなぐ予想外の出会いと運命を描いた物語。

2015/03/10

「6才のボクが、大人になるまで。」私的映画考Vol.300

先日、「6才のボクが、大人になるまで。」を観てきました。リチャード・リンクレイター監督作品。出演:エラー・コルトレーン、パトリシア・アークエット、ローレライ・リンクレーター、イーサン・ホーク、イライジャ・スミス、リビー・ヴィラーリ、ジェイミー・ハワード、アンドリュー・ヴィジャレアルほか。第87回アカデミー賞助演女優賞受賞作品(パトリシア・アークエット)。

テキサス州に住む6歳の少年メイソン(エラー・コルトレーン)は、キャリアアップのために大学で学ぶという母(パトリシア・アークエット)に従い、姉サマンサ(ローレライ・リンクレイター)と共にヒューストンに転居、そこで多感な思春期を過ごす。アラスカから戻って来た父(イーサン・ホーク)との再会、母の再婚、義父の暴力。周囲の環境の変化に時には耐え、時には柔軟に対応しながら、メイソンは静かに子供時代を卒業していくのだった。12年の時が様々な変化を生み出す中、ビールの味もキスの味も、そして失恋の苦い味も覚えたメイソンは夢を抱きながら大学へと進学し、母親から巣立っていくのだった。

主人公や両親など登場人物が12年にわたって演じ、撮り続けるという斬新な手法で描いた本作。ドキュメンタリー作品のような雰囲気もありながら、しっかりドラマがあります。なにげない日常を描くわけですから、大きな出来事は起こりませんし、物語もたいした盛り上がりを見せません。それでも、画面に釘付けでした。本編が165分という長尺ではあったのに、です。主人公メイソンを中心に、家族を描きますが、その都度、しっかりと心の機微を捉えているのです。

これは大変なプロジェクトだとは思います。同じキャストで12年間をリアルタイムに追い続けるのですから。しかし、時代考証をしなくても良いというメリットはあります。ゲーム機や、テレビ、自動車等は移り変わっていきますし、その時代にしかなかった出来事も交えて、そのままリアルに撮影して良いのですから、これほど楽なことはないでしょう。ただし、経済的なことを考えなければ。

6才から18才まで、子どもは大きく成長します。その過程をつぶさに見ながら、母親の喜びも悲しみもありました。笑顔で送り出して上げたいのでしょうが、嘆きしか出ません。その気持ちはわからないではないですが、何となく違和感を感じました。メイソンの父役のイーサン・ホークのナチュラルな演技もあいかわらずで、良かった。

ラスト近くメイソンのガールフレンドが言います。「一瞬を大事にしろ」と。人生は瞬間、瞬間の積み重ねで、生きているその時を大切にすることが大事なのではないかと。そして、それは映画でも同じことだと。そんな風に感じました。また、時間は誰にでも平等にな流れ、止められない。だからこそ貴重で、素晴らしいモノなんだと思えました。

6歳の少年メイソンの成長とその家族の12年間の変遷を同じキャストでとらえたヒューマンドラマ。

2015/02/10

「おやすみなさいを言いたくて」私的映画考Vol.299

先日、「おやすみなさいを言いたくて」を観てきました。エーリク・ポッペ監督作品。出演:ジュリエット・ビノシュ、ニコライ・コスター・ワルドー、ローリン・キャニー、クロエ・アネット、デニス・マコーマック、ラリー・マレン・ジュニア 

報道写真家のレベッカ(ジュリエット・ビノシュ)は家族のいるアイルランドを離れ、紛争地帯など危険に身をさらしながら世界各地の問題を取材し、誰も気付いていない現実を伝えようとレンズを向けている。そんな彼女を理解してくれている夫マーカス(ニコライ・コスター=ワルドー)に長女ステフ(ローリン・キャニー)と次女リサを託し、精力的に仕事に打ち込んでいた。 彼女が命を落としかねない事件に巻き込まれたことから、家族の形に疑問を持つマーカスや、心を閉ざすステフら家族の本心が見えてくる。やがてレベッカは、自分の仕事が愛する家族を苦しめていたことに気付いていくのだった。

深い穴の底に横たわる女性、穴の縁で祈りを捧げる女性たち・・・。冒頭の得体の知れない儀式の正体は、なんと自爆テロ前の生前葬でした。その後の一部始終を取材するレベッカ。あまりにもむごたらしい現実に冒頭から打ちのめされます。

世界の片隅で実際に行われている、誰も知らない現実。その取材を続ける報道写真家。しかし、そんな彼女にも愛する家族がいるのです。ある事件を通して、レベッカとその家族は、現実を見つめ直します。いつも母親の死におびえている娘たち。思春期を迎えた長女ステフは、死にかけた母親に対して、どういう態度を取れば良いのかわかりません。

そして、レベッカは仕事を辞め、再び戦地には行かないと決意をします。家族との絆を再び取りもどすために。

しかし、その後、レベッカとステフは、娘の課題のためにケニアへ向かいます。安全だったはずの旅でしたが、ある事件が発生。レベッカは取り返しのつかない行動に出てしまうのでした。

家族を愛しているからこその行動、誰かがやらなければと言う使命感、その狭間で揺れる主人公の葛藤。悩み続けたレベッカが最後にとった決断とは?泣き所は幾度となく訪れ、愛あるからこその決断に感涙。

命をかけて世界中を飛び回る報道写真家が、家族との関わりの中から、仕事か家族かという究極の選択に迫られる姿を描く人間ドラマ。

2014/12/16

「ゴーン・ガール」私的映画考Vol.298

先日、「ゴーン・ガール」を観てきました。 デヴィッド・フィンチャー監督作品。出演:ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、ニール・パトリック・ハリス、タイラー・ペリー、キャリー・クーン、キム・ディケンス他。

アメリカ・ミズーリ州。幸せに満ちた理想的な結婚生活を送るニック(ベン・アフレック)とエイミー(ロザムンド・パイク)だったが、結婚5周年を迎えたその日にエイミーの姿が忽然と消える。家には争った形跡があり、さらにキッチンからエイミーの大量の血痕が見つかった。警察は失踪と他殺の両面から捜査を進めるが、ニックを疑いはじめる。この事件は注目され報道は過熱、ニックは全米から疑いの目を向けられ、次第に秘密が明るみになっていくのだった。

失踪当日にはじまり、1日目、2日目と進んでいき、合間に過去の出来事が挿入されると言う展開。本作の脚本を担当したのは、原作者のギリアン・フリン。これが実に大きかったように思います。贅肉をそぎ落とし、よく練られた脚本は、テーマをそこなうことなく、それでいれ伏線が効いていて、素晴らしいの一言。その良くできた脚本を、デヴィッド・フィンチャーが撮るのですから、言うことありません。

後半は、どんでん返しにより、思わぬ方向へと物語は展開していきます。その驚愕の構造でミスリードさせられていたことに気づかされます。これもまた素晴らしい。

テーマも夫婦の抱えるディープな闇をえぐっているようで、男はなんておろかなのだろうと思ってしまいますし、さらに女性の恐ろしさも感じます。人間はどこまで残酷になれるのだのだろうか?そして、夫婦間で最悪の罰とはなんなのか?そんな、身近にあるかもしれない恐怖を感じさせられ、身につまされるような思いに駆られる作品です。

ある日、突然失踪した妻を捜す男が、過熱するメディア報道によって次第に追い詰められていき、あげくに殺人犯の疑いをかけられるようになっていく姿を描くサスペンス・スリラー。

2014/12/02

「フューリー」私的映画考Vol.297

先日、「フューリー」を観てきました。デヴィッド・エアー監督作品。出演:ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサル、スコット・イーストウッド、ゼイヴィア・サミュエル、アナマリア・マリンカ、アリツィア・フォン・リットベルク他。 

1945年4月、第二次世界大戦下。ナチス占領下のドイツに連合軍は侵攻していた。ある日、ドン・コリアーの戦車部隊に新兵のノーマン(ローガン・ラーマン)が副操縦手として配属される。繰り返される戦闘の中、想像をはるかに超えた戦場の凄惨な現実を目の当たりにするノーマン。5人の兵士たちがぶつかりあいながらも絆を深めていく中、ドイツ軍の攻撃を受け、他部隊はほぼ全滅してしまう。そして、拠点を死守するべく、300人ものドイツ軍部隊が彼らを包囲されながらも、無謀にも“フューリー”一輛で敵を迎え撃つのだった。

第二次大戦を題材にした作品は数あれど、戦車部隊の作品はこれまで見たことがありませんでした。局地戦になりますから、映像的には地味ではあるのでしょうが、本作では迫力の戦闘シーンがリアルに描かれて行きます。

そして、副操縦士として配属された新兵ノーマンの目を通して、戦争の悲惨さを描いていきます。人間の行為とは思えないそのおぞましさに、寒気がします。しかし、それが現実。ドンの台詞に、「理想は平和だが、歴史は残酷だ」と言うのがありますが、まさにその通りなのです。いったい何のために戦っているのか、神はその行為に対して、どういう審判を下すのか、ふつふつと疑問・不安がわき上がっていくのでした。

“ブラッド・ピット最高傑作”“アカデミー賞最有力”と言う触れ込みの本作。確かに、素晴らしい作品ではあるのでしょうが、最後の締めに、もう少し何かあった方が良かったのでは、と思わずにはいられませんでした。家族のようになっていく仲間たちでしたが、一人また一人と戦死していきます。そして最期の時。感情の高まりを、そして行き場のない怒りをどこへぶつければ良いのか?そんな想いに駆られました。余韻ですよね。

“フューリー”と呼ばれるシャーマンM4中戦車たった一輛で300人ものドイツ兵に戦いを挑む5人の男たちの姿を描く感動の戦争ドラマ。

2014/11/26

「インターステラー」私的映画考Vol.296

先日、「インターステラー」を観てきました。クリストファー・ノーラン監督作品。出演:マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ケイシー・アフレック、ジェシカ・チャステイン、ウェス・ベントレー、マッケンジー・フォイ、ジョン・リスゴー、リーア・ケアンズ他。

劇的な環境変化によって、寿命が尽きかけている未来の地球。土星付近に発見されたワームホールを利用し、居住可能な新たな惑星を探すという、生きて帰れるかわからない重大な使命を担う壮大な旅に、まだ幼い子供を持つ元エンジニアのクーパー(マシュー・マコノヒー)と、数少ないクルーが選ばれる。人類の限界を超え、不可能にも思える史上最大のミッションのため、前人未到の未開の地へ旅立った一行は、自らの使命を全うし、愛する家族の元へと生還することができるのか?

実に壮大なSFエンターテインメント作品でした。設定的にはハードSFなので、むずかしい理論や事象が次々に登場します。しかし、そんな面倒なことは脇に置いておいても良いくらい、時空を超えた父と娘の人間ドラマが良かったです。悲しい別れ、絆、信じ合う心、そして愛。おもいやる気持ちは時空を超えて響き合うのでした。

本物志向のノーラン監督らしく、フルサイズの宇宙船を作ったり、アイスランドでロケを敢行したり、広大なトウモロコシ畑のオープンセットを作ったりと、臨場感たっぷりの映像は見応えたっぷりでした。また、無音の宇宙は新鮮です。本来はこれがリアルなんですけどね。

終盤、地球での出来事が伏線として集束していきます。あの幽霊は実は・・・。自己犠牲と言ってしまうのはカンタンですが、そこには娘に対する愛、人類に捧げる大いなる愛があったのでしょう。そして、“彼ら”の意志はここまで予見していたのかも(というよりは知っていて当たり前なのですが)。

環境の変化などの影響で食糧危機に陥り、滅亡の危機を迎えた人類が新たな星を目指す姿を親子の愛を絡めつつ描いたSFドラマ。

2014/10/03

「アバウト・タイム 愛おしい時間について」私的映画考Vol.295

先日、「アバウト・タイム 愛おしい時間について」を観てきました。リチャード・カーティス監督作品。出演:ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、 トム・ホランダー、マーゴット・ロビー、リンゼイ・ダンカン他。 

自分に自信がなく恋人のいないティム(ドーナル・グリーソン)は21歳の誕生日に、父親(ビル・ナイ)から一家の男たちにはタイムトラベル能力があることを告げられる。恋人を得るため張り切ってタイムトラベルを繰り返すティムは、やがて魅力的な女性メアリー(レイチェル・マクアダムス)と恋をする。しかしタイムトラベルによって生じたアクシデントにより、そもそもメアリーと出会っていなかったということになってしまうのだった。

ラブストーリーには違いはないのでしょうが、主人公がタイムトラベルができると言う特殊能力を持っているというSF設定を取り入れたファンタジックな物語に仕上がっています。半信半疑で能力を使い始めるティム。最初は些細な事から、次第にコツを掴み、大きくジャンプ。

ある日であった女性メアリーと親密になった日に、別の問題が発生し、タイムスリップして解決しますが、そのことによって、メアリーと出会った時間さえもなかったことになってしまいます。少ない情報から彼女と再びめぐり逢うために努力を重ねます。そして、再会。何度かタイムスリップをし、つきあうことになります。あー良かった。

自分だけはやり直す前の時間の記憶があるという点が、物語をユーモラスに展開させていきます。その中でも、重要な役割をするのがビル・ナイ演じる父親。当然、タイムスリップのベテランです。やがて、タイムスリップに頼ってもどうにもならない自体に遭遇します。ティムは苦悩します。

ラブストーリーでもありますが、父と息子の物語でもあります。父の最後のタイムスリップは、ティムの少年時代へ。一番楽しかった瞬間。懐かしい想い出の日。泣き所でしょう。他にも、至るところに泣き所が訪れます。結婚式のスピーチのシーンも良かった。感動。

人生は、何度繰り返しても、結局はそうは変わらない。日々おこる小さなことに対しても、生きる事に感謝する心を忘れなければ、楽しめるし、感動できるのだから、毎日を充実させ、懸命に生きる事が大切。それが幸せなんだと。

父親からタイムトラベル能力がある事を知らされたた青年が、最愛の人を見つけるためにタイムトラベルを重ね、人生における様々な事柄を学んでいく姿がつづられるファンタジックラブストーリー。

2014/08/18

「17歳のエンディングノート」私的映画考Vol.294

先日、「17歳のエンディングノート」を観ました。オル・パーカー監督作品。出演:ダコタ・ファニング、ジェレミー・アーヴァイン、パディ・コンシダイン、オリヴィア・ウィリアムズ、カヤ・スコデラーリオ他。

白血病で余命宣告を受けたテッサ(ダコタ・ファニング)は学校へも行かず、引きこもる日々を過ごしていた。しかし、17歳になり死期が迫っていることを悟り、残りの人生を懸命に生きるべく、死ぬまでにしてみたい事柄のリストを作る。作成したリストの内容を、親友のゾーイ(カヤ・スコデラーリオ)と共に実行していく中、隣に引っ越してきた青年アダム(ジェレミー・アーヴァイン)と恋に落ちるのだった。

WOWOWで放送されている作品の中から、観たことがなく、5.1ch音声であると言う条件でとりあえず片っ端に録画しています。で、本作もそうでしたが、全く情報がなく、誰が出演しているのかも知らずに鑑賞しました。そしたら、これが良かったのです。

テッサを演じているのはあの美少女子役だったダコタ・ファニング。美しいは美しいのですが、髪を短く切っており、表情に乏しく、病的な雰囲気があり、最初は誰か分かりませんでした。テッサの家庭は父親(パディ・コンシダイン)と弟との3人暮らし、母親(オリヴィア・ウィリアムズ)は離婚後家を出ているよう。父親はマニアというくらいに、闘病する娘をなんとか延命させようと必死でしたが、化学療法を止めています。

親友のゾーイとは何でも話せる関係。一緒に死ぬまでにやりたいことの実行を助けています。中には法的には問題があることも入っています。暗くなりがちですが、ふたりの関係はパワーを感じられ、明るく過ごそうという気持ちが見え隠れしています。それもまたせつない。

時々人生に嫌気がさすテッサ。想い出の品を燃やそうとして、隣家を訪れ、アダムと出会います。最初は事情を知らなかったアダムでしたが、事実を知り衝撃を受けます。しかし、すでに好き合っていたふたり。父親の制止を振り切り、残りの人生を楽しもうとするのでした。ラブストーリーの様相を呈してきて、その関係には終わりが決まっているのですからたまりません。時々映しだされる景色が実に美しいのですが、その中で過ごす、テッサの楽しそうな瞬間の表情はさらに美しい。これが実にせつない。

泣き所は、何度となく訪れますが、年の離れた弟が言った一言にやられました。「お姉ちゃん、僕に取り憑いても良いからね。大丈夫だから」と。彼なりの別れの言葉なのでしょうけど、その幼さが実にせつないです。

人生は瞬間の連続で、それぞれの今である一瞬一瞬を大切に懸命に生きる事で、新しい人生は紡がれる。だからこそ、一瞬を生きる事を大切にしなければいけないのだと。余命宣告を受けたからそうするのではなく、常に全力で生きることを痛感させてくれる作品でした。

不治の病で余命9か月の少女が、残りの人生でしてみたい事柄を実行していく中で予定外の恋に落ち、生きる意味を見いだしていく人間ドラマ。

2014/07/17

「世界の果ての通学路」私的映画考Vol.293

先日、「世界の果ての通学路」を観てきました。パスカル・プリッソン監督作品。 

ジャクソンと妹サロメは野生の象やキリンを避けながらサバンナを駆け抜け15km先の学校へと急ぐ。カルロスと妹ミカイラは雄大なパタゴニア平原を愛馬でひた走る。ザヒラはモロッコのアトラス山脈を臨む山奥の村から寄宿学校へと友人達と通う。インドで暮らす生まれつき足が不自由なサミュエルは弟たちの引く車いすで登校する。彼らは危険も顧みず、学校に向け道なき道を進んでいくのだった。

ただただひたすら、登校する様子を追いかけるドキュメンタリー作品なのですが、これが実に面白く、興味深い作品になっています。皆一様に学校へ向かうのが楽しそうですし、そこには悲壮感はありません。ある1日の片道だけを追いかけますが、これが毎日のように続き、往復なのですから凄いことです。サバンナを駆け抜ける兄妹は、まさに命がけ。凶暴な象と遭遇するシーンでは、息をのみます。

アクシデントに見舞われる子供たちもいます。足を痛める子がいたり、車いすが壊れてしまったり、馬にもアクシデントがあったりします。ドラマチックです。これだけ必死に学校へ通うなんてことは、日本では考えられませんから、それだけでも拍手を送りたくなります。きっと、陰湿ないじめや学級崩壊なんか、考えられないし、実際に無いんだろうなあと思ってしまいます。

最後に、子供たちのインタビューがありますが、それぞれが夢を持っています。これが素晴らしい。そして学校に通うことによって、その夢が果たせるに違いないと、本気で思っているのです。これがさらに素晴らしい。どんな困難が立ちはだかろうと、この子供たちは、これからも、きっと学校に通うはず。そして、夢に近づこうと努力をするはず。学校へ行くこと、教育を受けられることを当たり前だと思っている我々は、考えを新たにしなければいけない。それがどんなに幸せなことなんだと。

学校で勉強するため、ケニア、アルゼンチン、モロッコ、インドの道なき道を何時間もかけて通学する子どもたの日常を追い掛けるドキュメンタリー。

2014/06/13

「マンデラ 自由への長い道」私的映画考Vol.292

先日、「マンデラ 自由への長い道」を観てきました。ジャスティン・チャドウィック監督作品。出演:イドリス・エルバ(「パシフィック・リム」)、ナオミ・ハリス、トニー・キゴロギ、リアード・ムーサ他。

南アフリカ共和国。弁護士として働いていたネルソン・マンデラ(イドリス・エルバ)は、現在の状況に疑問と怒りを覚え、反アパルトヘイト活動に身を投じる。やがて指導者として活躍するようになったものの、当局から目を付けられた彼は国家反逆罪で逮捕され、終身刑の宣告を受けてしまう。だが、決して衰えることのない闘志を持って民衆や世論を動かし、27年もの獄中生活を経てアパルトヘイト撤廃へと突き進む。そして、彼の活動の影には、常に最愛の妻ウィニー(ナオミ・ハリス)の存在があった。

名前こそ知っているモノの、晩年の活動しか知らなかったネルソン・マンデラ氏。それも映画から得られる知識だけでした。そのマンデラの半生を描いた本作。幼少の頃にはじまり、青年、壮年、老年と描いてきます。

反アパルトヘイト活動をしながらも2度の結婚をし、これからという時に、逮捕、収監されてしまいます。武力闘争へと傾倒していた結果でもありました。それにしても、この時代の政府は、なんとも過激です。これが許されていたというのは、恐ろしい限りです。

27年間にわたる獄中生活も克明に描きます。黒人男性は成人でも白人から“ボーイ”と呼ばれていました。だから、獄中では半ズボンを支給されるのです。これに対して、看守に自分たちを認めさせるために、長ズボンを要求するのです。ここでも政治はあったのです。

何年が過ぎているのか分からないのですから、白髪交じりになっていく髪に、年齢を感じます。あとは子どもの成長。その間も、妻ウィニーは圧政と戦っていました。自らも収監されたこともありましたが、それでも挫けず、武力を持って戦い続けたのです。

しかし、マンデラの考えは違いました。復讐しても何も変わらない、憎しみの連鎖はどこかで断ち切らなければ、この国は滅んでしまうと。それには赦しが必要なのだと。その信念の元、政府との交渉は続き、ついに自由になる日がやってきました。何年も待ち望んだ自由の日が。そして、心の支えとなっていた妻ウィニーへの想いは変わりませんでした。

大統領就任までを描く本作。おしくも昨年2013年12月に亡くなってしまいましたが、生前、完成前の映像を本人は見ることが出来たんだとか。

本作は政治的な側面も描かれいますが、ラブストーリーとしての面もきっちり描かれています。そこが良かった。2人目の妻ウィニーとの恋愛、そして引き離された二人。何年かぶりに妻との面会が許され、ふれあう二人。なかなか見ることのないシチュエーションです。いつも写真を見ていたマンデラ。想いは変わらないのかと思いきや、結婚した頃の彼女に恋をしているのだといいます。ここもなんか良かった。

国家反逆罪に問われ、27年間の獄中生活を強いられるも、後に南アフリカの大統領を務め、ノーベル平和賞にも輝いたネルソン・マンデラの半生を、その知られざる生い立ちや妻との愛を描いた人間ドラマ。

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